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探偵の知識

供述証拠の収集・保全|取調べの手続き|証人尋間の請求

2025年11月19日

『刑事訴訟法』 酒卷 匡著・2024年9月20日
ISBNISBN978-4-641-13968-8

(1)次の場合,検察官は、第1回の公判期日前に限り、裁判官に対して証人尋問の請求をすることができる。請求権者は捜査機関のうち検察官に限られる。
第1回の公判期日前に限られるのは、公判開始後は公判期日の証拠調べとして実施するのが相当だからである。
第一は、犯罪の捜査(「犯罪の証明」だけには限られない)に欠くことのできない知識を有すると明らかに認められる者が、前記法 223条による参考人の取調べに対して、出頭または供述を拒んだ場合である(法226条)。捜査に欠くことができない知識を有する者が任意の取調べを拒絶する場合に、捜査を進展させるため、法的強制により必要不可欠な供述を獲得することを目的とした制度である。
第二は、第一の場合と異なり、既に参考人として取調べに応じ任意の供述をした者が、公判期日においては、前にした供述と異なる供述をするおそれがあり、かつ、その者の供述が犯罪の証明に欠くことができないと認められる場合である(法 227条)。様々な事情(公開法廷・職人の状況、被告人との対面等)により、証人が公判期日における尋問の過程で前にした捜査段階の供述と異なる供述をすることはあり得るところであるが、前記のとおり、捜査段階で犯罪の証明に不可欠な供述をした参考人については、特来の立証に備え検察官調書が作成されているのが一般である。このような場面において、検察官調書が法
321条1項2号後段の要件を充足すると認められれば、これを証拠とすることができる。
これに対して、裁判官の行う証人尋間における供述を録取した書面は、同条
1項1号の定める「裁判官の面前・・・・における供述を録取した書面」に該当し。
検察官調書より一層緩やかな要件で証拠とすることができる(「公判期日において前の供述と異なった供述をしたとき」で足りる。法 321条1項2号後段の要件と対比せよ)。この制度は、検察官の公判立証をより容易にする供述証拠の保全を目的としたものである。捜査段階であらかじめ法 227条の証人尋問調書(規則38条)が作成されていれば、公判期日において検察官調書の採否を巡る立証を回避することができ、迅速・効率的な公判審理の進行に資するであろう。
(2)証人尋問の請求を受けた裁判官は、証人の尋問に関し,証人尋問に関する総則規定(法143条以下)を準用し対象者に宣誓させて尋問を行う(法228条1項)。検察官は尋問に立ち会う権利を有する(法 157条1項)。これに対して、被疑者(又は被告人)及び弁護人については、公判期日の証人尋問とは目的を異にするので、裁判官が、捜査に支障を生ずるおそれがないと認めるとき、尋問に立ち会わせることができる(法228条2項)。証人の供述を録取した尋問調書その他尋問に関する書類は、尋問終了後、裁判官から検察官に送付される(規則163条)。前記のとおり証人尋問調書は法 321条1項1号により証拠とすることができる〔第4編証拠法第5章Ⅳ 4〕。
*情報通信技術の進展・普及に伴う法整備に関する法制審議会答申において、被疑者等の供述内容を記録した電磁的記録等の作成及び取扱いについて、大要次のような要網が示されている(第1-1・7)。(1)被疑者の供述を録取する調書の作成ア)法198条3項の調書(竜磁的記録をもって作成したものに限る。)は、その内容を表示したものを被疑者に関覧させ、または読み開かせて、誤りがないかどうかを問い。
被疑者が増減変更の申立てをしたときは、その供述を調書に記録しなければならないものとする。イ)被疑者が、アの調書に誤りのないことを申し立てたときは、これに裁判所の規則で定める署名押印に代わる措置をとることを求めることができるものとし、ただし、これを拒絶した場合は、この限りでないものとする。(2)供述を録取した電磁的記録で裁判所の規則で定める供述者の署名または押印に代わる措置がとられたものについて、供述を録取した書面で供述者の署名または押印のあるものに係る法規定の規律(例.法321条1項、322条1項等)と同様の規律を設ける。
(3)被告人以外の者の供述を記録・録取した電磁的記録等の証拠能力に関して、法
321条1項1号の「裁判官の面前」及び同項2号の「検察官の面前」について、映像と音声の送受信により相手の状態を相互に認識しながら通話をすることができる方法による場合を含む旨を規定する。