その他の捜査手段|体液の採取|強制採尿令状の射程
2025年11月19日
『刑事訴訟法』 酒卷 匡著・2024年9月20日
ISBNISBN978-4-641-13968-8
(1) 最高裁が以上のような「条件附捜索差押え状」の方式を示したのは、身体内部の臓器(膀胱)内に貯留されていた尿の強制取得処分についてである。
他の体液採取や身体内部に侵入する処分の方式については何も述べていない。
この方式の射程距離がどこまで及ぶかについては、次のように考えられる。
第一、仮に最高裁の解釈に立って「捜索」が身体内部に及ぶことを前提としても、「差押え」処分の対象は「証拠物」等の「物」であり(法99条・219条1項参照)、現に生体を構成している人体内の血液・精液・髄液・胃液等の体液一般は「物」に当たらないので、差押えの対象にはならないと解される。酸胱内に貯留されている尿は老廃物であり早晩排出される性質上、生体を構成する体液とは異なり「物」に該当するから差押合状による取得が可能とされたとみ
られる。
したがって、前記のような生体構成要素の体液を採取する場合には、条件捜索差押状の方式は不適である。むしろ。鑑定処分許可状と身体検査令状の併用が適切である。他方。消化器官内に嫌下された「物」は差押えの対象となり得るから、前記判例の法解釈に立てば、条件附捜索差押状の法形式により証拠物として収集・保全するのが一貫するであろう(もっとも。前記のとおり。
捜索・差押えに「必要な処分」として健常者に吐剤・下剤を使用することには疑問がある。仮に薬物使用によりの下された物体を排出させる場合には、専門家たる医師の関与が不可欠であるから、医師をして医学的に相当と認められる方法により行わせる旨の条件を附した捜索差押状と共に、当該医師を鑑定受託者とした鑑定処分許可状を併用するのが適切である)。
(2)第二,最高裁は、明文規定がないにもかかわらず、人の身体を対象とする「捜索」令状に条件を附加することを認めた(その後最高裁は、明文規定のない一般の「検証」令状にも条件を加することを認めた。電話傍受に関する最決平成
11・12・16刑集53巻9号1327頁参照)。その趣意が処分対象者の被る法益侵害を減縮させる方向に作用する法益保護であることから、令状裁判官が同様の趣旨に立った条件の附加を行うことは明文規定の有無を問わず可能であるようにもみえる。もっとも、現行法の定める処分類型の基本的区分を曖昧化したり、法定されていない新たな処分を創設するのと同様の機能を果たす条件の附加は違法というべきである。一般の捜索・検証・差押え処分の実行過程に対して、令状裁判官が条件の附加によりどこまで統制制興し得るかは、慎重な検討を要するであろう(近時、最高裁は、GPS 捜査事案において、強制処分法定の趣意から状に条件を附加する点について慎重かつ賢明な判断を示している。最大判平成 29・3・15刑集71巻3号13頁〔第1章13(3)])。
「人の身体」を対象とする処分について、例えば、従前、検証としての身体検査令状によりはじめて可能と解されていた裸にして身体の外表部や体腔内を見分・探索する行為について、条件附きの身体を対象とする捜索状のみでも
実施できるとするのは適切でない。捜と換証及び発定処分としての「多に査」に関する実定法の法形式と区分を無意味とする条件の時加は疑間であろう。
(3) 第三、強制採尿の法的性質が捜素・差押えであるとすれば、適法な逮捕に伴う無令状「強制採尿」も認められる場合があるか(法220条1項2号・3項)。
判例は数利官が条件を開加した金沢によることを前提としているので、検証と
しての身体検査の場合と同様に、無状処分は想定されておらず【第6章13(1),許されないと解すべきである。たとえ響察署内の医務室に現在する被疑者をその場で逮捕した場合であっても、強制採尿令状の発付を得ることなく採尿を実施することはできない。
他の体液採取や身体内部に侵入する処分の方式については何も述べていない。
この方式の射程距離がどこまで及ぶかについては、次のように考えられる。
第一、仮に最高裁の解釈に立って「捜索」が身体内部に及ぶことを前提としても、「差押え」処分の対象は「証拠物」等の「物」であり(法99条・219条1項参照)、現に生体を構成している人体内の血液・精液・髄液・胃液等の体液一般は「物」に当たらないので、差押えの対象にはならないと解される。酸胱内に貯留されている尿は老廃物であり早晩排出される性質上、生体を構成する体液とは異なり「物」に該当するから差押合状による取得が可能とされたとみ
られる。
したがって、前記のような生体構成要素の体液を採取する場合には、条件捜索差押状の方式は不適である。むしろ。鑑定処分許可状と身体検査令状の併用が適切である。他方。消化器官内に嫌下された「物」は差押えの対象となり得るから、前記判例の法解釈に立てば、条件附捜索差押状の法形式により証拠物として収集・保全するのが一貫するであろう(もっとも。前記のとおり。
捜索・差押えに「必要な処分」として健常者に吐剤・下剤を使用することには疑問がある。仮に薬物使用によりの下された物体を排出させる場合には、専門家たる医師の関与が不可欠であるから、医師をして医学的に相当と認められる方法により行わせる旨の条件を附した捜索差押状と共に、当該医師を鑑定受託者とした鑑定処分許可状を併用するのが適切である)。
(2)第二,最高裁は、明文規定がないにもかかわらず、人の身体を対象とする「捜索」令状に条件を附加することを認めた(その後最高裁は、明文規定のない一般の「検証」令状にも条件を加することを認めた。電話傍受に関する最決平成
11・12・16刑集53巻9号1327頁参照)。その趣意が処分対象者の被る法益侵害を減縮させる方向に作用する法益保護であることから、令状裁判官が同様の趣旨に立った条件の附加を行うことは明文規定の有無を問わず可能であるようにもみえる。もっとも、現行法の定める処分類型の基本的区分を曖昧化したり、法定されていない新たな処分を創設するのと同様の機能を果たす条件の附加は違法というべきである。一般の捜索・検証・差押え処分の実行過程に対して、令状裁判官が条件の附加によりどこまで統制制興し得るかは、慎重な検討を要するであろう(近時、最高裁は、GPS 捜査事案において、強制処分法定の趣意から状に条件を附加する点について慎重かつ賢明な判断を示している。最大判平成 29・3・15刑集71巻3号13頁〔第1章13(3)])。
「人の身体」を対象とする処分について、例えば、従前、検証としての身体検査令状によりはじめて可能と解されていた裸にして身体の外表部や体腔内を見分・探索する行為について、条件附きの身体を対象とする捜索状のみでも
実施できるとするのは適切でない。捜と換証及び発定処分としての「多に査」に関する実定法の法形式と区分を無意味とする条件の時加は疑間であろう。
(3) 第三、強制採尿の法的性質が捜素・差押えであるとすれば、適法な逮捕に伴う無令状「強制採尿」も認められる場合があるか(法220条1項2号・3項)。
判例は数利官が条件を開加した金沢によることを前提としているので、検証と
しての身体検査の場合と同様に、無状処分は想定されておらず【第6章13(1),許されないと解すべきである。たとえ響察署内の医務室に現在する被疑者をその場で逮捕した場合であっても、強制採尿令状の発付を得ることなく採尿を実施することはできない。