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探偵の知識

公訴|公訴権の運用とその規制|処分の通知等

2025年11月19日

『刑事訴訟法』 酒卷 匡著・2024年9月20日
ISBNISBN978-4-641-13968-8

1)検察官の事件処理結果に最も関心を有するのは被疑者であるが、犯罪被害者等被疑者以外の事件関係者もまた、重大な関心を有する場合があり得る。
法及び運用においては、水のような処分結果の通知制度が設けられている。2) 起訴され被告人となった者には、裁判所から遅滞なく起訴状の謄本が送達されるのが原則である(法271条)。これに対して不起訴処分の場合には、検察官は、被疑者の請求があるときは、速やかにその旨を告知しなければならない(法259条)。
*検察官が公訴を提起しないときは、実務上、不起訴裁定書を作成し、不起訴処分の根拠を明らかにしておくこととされている。不起訴裁定書には、裁定主文として、嫌疑なし、嫌疑不十分、罪とならず、刑事未成年,心神喪失,起訴猶予等が記載され、さらにその理由の説明が付加される。
(3) 検察官は、告訴・告発・請求のあった事件について、起訴または不起訴の処分をしたときは、速やかにその旨を告訴人・告発人・請求人に通知しなければならない。公訴を取り消したときも同様である(法 260条)。また、不起訴処分をした場合に、告訴人等から請求があるときは、その理由を告知しなければならない(法 261条)。
このうち、不起訴処分の通知と理由の告知は、それ自体が検察官の不起訴判断の公正確保に資するのみならず、事件処理の帰趨に関心を有する告訴人等に対して、不起訴処分の控制を目的とした制度(付審判請求手続,検察審査会への審査申立て)の起動に向けた手続をする機会を付与することになる。
不起訴理由として告知される内容は、「罪とならず」「嫌疑不十分」「起訴猶予」等の不起訴裁定主文にとどまり、例えば、嫌疑不十分と判断された理由や起訴猶予処分に至る判断内容についてまでの説明は必要でないとされている。
しかし、告訴人等に理由を告知する趣旨からは、より詳細な説明が禁じられているわけではなく、むしろ望ましいというべきである。事案の性質や不起訴とされた被疑者の名誉等を勘案して具体的事案に応じた理由の説明を行うのが適切であろう。
*後記のとおり、不起訴処分に対する法律上の控制制度としては、付審判請求手続と検察審査会に対する審査申立てがある。このほか、不起訴処分をした検察官の上検察庁の長に対する不服申立てにより監督権の発動を促す方法が実務上認められている。このような不服申立てがあったときは、当該上級検察庁において受理し、処分を再検討するなどの処理が行われる。
(4) 検察官が犯罪被害者等から情報提供を求められた場合には、さらに「被害者等通知制度」が1999(平成11)年から実施・運用されている。犯罪被害者やその遺族等、目撃者その他の参考人に対して、検察官が、事件の処理結果」起訴された場合の公判期日、刑事裁判結果等を通知するものである。被害者やその遺族または弁護士であるその代理人に対しては、希望があれば、不起訴裁定の主文にとどまらず不起訴裁定の理由の骨子も通知することができるとされている。