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探偵の知識

公判手続き|総説|公判手続の諸原則|裁判の公開

2025年11月19日

『刑事訴訟法』 酒卷 匡著・2024年9月20日
ISBNISBN978-4-641-13968-8

(1)裁判の審理・判決を不特定多数の者(公衆)が自由に傍聴できる状態で行うべきものとする原則を「公開主義」という。公開主義は、ヨーロッパ遅代刑事裁判形成期において、旧体制の秘密・非公開裁判を廃し、司法の公正を担保するために導入された近代州事裁判の原則のひとつである。日本国憲法も、刑事被告人の基本権として「公開裁判を受ける権利」を保障し(意法37条】項),さらに「裁判の対審及び判決は、公開法廷でこれを行」(憲法82条1と定めて、公判期日の審理と判決の公開を保障している。
第1章総説
(2)憲法は、公開主義の例外として、裁判所が、裁判官の全員一致で、公の税学または善良の風俗を害するおそれがあると認めた場合には、対審すなわち公判期日の審理を非公開で行うことができるとする。ただし、政治犯罪、出版に関する犯罪または憲法第3章で保障する国民の基本権が問題となっている事件の審理は、常に公開しなければならない(恋法82条2項)。判決の言渡しを非公開で行うことは許されない。
公開停止の手続は裁判所法に定められており、審理の公開を停止する場合には、公衆を退延させる前に、その旨を理由と共に言い渡さなければならない
(裁判所法 70条前段)。判決を言い渡すときは、再び公来を入延させなければならない(同法70条後段)。
審判の公開に関する規定に違反してなされた判決は、控訴審において破棄される(法377条3号・397条1項)。
*憲法82条の許容する公開主義の例外(「公の秩序又は善良の風俗を害する度がある」の解釈)に基づき、民事訴訟には非公開審理の特別手続が設けられている場合がある(例。特許法105条の7,不正競争防止法13条の定める営業秘密保護のための季問等の公開停止)。立法論として、同様の秘密保護の趣旨を、営業密侵害被告事件の刑事裁判にも及ぼし得るかは議論のあり得るところであり、諸外国には刑事事件についても裁判所の判断により営業秘密等の保護を優先して審理の公開停止を可能とする立法例がある。しかし,憲法 82条に加えて、憲法37条はとくに刑事被告人の基本権として別途「公開裁判を受ける権利」を保障しているので、営業秘密等の経済的利益保護を理由に被告人の基本権を直接制約する非公開審理を導入するのは妥当とは思われない。審理の公開は維持しつつ、秘密保護との合理的調整を図る制度設計が適切であろう。不正競争防止法第6章の定める「刑事訴訟手続の特例」はそのような試みの実例である。