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探偵の知識

公判手続き|公判の準備|公判前整理手続|公判前整理手続の意義と制度趣旨

2025年11月19日

『刑事訴訟法』 酒卷 匡著・2024年9月20日
ISBNISBN978-4-641-13968-8

公判前整理手続は、刑事裁判の充実・迅速化を図り,事件の争点に集中した審理を実現するための公判準備である。公判審理を継続的,計画的かつ迅速に行うため、争点及び証拠を整理することを目的とする(法 316条の2)。2004(平成16)年の法改正により設計・導入され、2005(平成17)年11月から実施されている。
迅速かつ充実した公判審理を実現するためには、争点に集中した証拠調べを連日的に実施する必要があり、そのためには、第1回公判期日前に、あらかじめ両事者が公判でする予定の具体的主張を交換し、これを通じて画定された争点について、取り調べるべき証拠を選別・整理し、証拠調べの順序・方法を決定した上で、個々の証拠調べに要する時間を見積もり、必要な回数の公判期日をあらかじめ指定するなどして、明確な審理計画を策定しておくことが要請される。また、争点整理に資する被告人側の具体的主張明示と立証準備のためには、被告人側に対して、検察官が取調べ請求を予定する証拠以外の,被告人の防票にとって必要・重要な証拠の事前開示が不可である。さらに、裁判員裁判では、一般国民に対する負担過重を避け、迅速で分かりやすい審理が要請されるので(裁判員法51条)、明確な審理計画のもと、整理された手点について、直接・口頭の証拠を中心とした立証の準備が要請されるのである。このような第1回公判期日前の公判準備は、本来、当事者追行主義刑事訴訟の健全・的確な作動のために必要不可大な手続段階として、組み込まれるべきものであった。また。争点撃理と立証計画策定及びその前提となる検察官手持ち証拠の被告人側への開示という設計思想は、充実した刑事裁判実現のための
普通的前提というべきである。公判前理手続の導入は、現行法制定当初落していた本来在るべき手続段階を設定し、この手続に関与する法律家に対して、知力を傾けるべき新たな領域を創設したのである。