ホーム

探偵の知識

公判手続き|公判の準備|公判前整理手続|手続の関与者

2025年11月19日

『刑事訴訟法』 酒卷 匡著・2024年9月20日
ISBNISBN978-4-641-13968-8

(1)公判前理手続を主宰するのは、当該事件の審理を担当する受訴裁判所である(法316条の2)。また,当事者追行主義訴訟の準備段階においても主導的に活動すべきは両当事者であるが、この手続の運用には的確な法的技能を要するので、弁護人がなければ手続を行うことができず(法 316条の4),手続期日には検察官と弁護人の出頭が必要的である(法316条の7)。
被告人の出頭は必要的でないが、出頭する権利があり、また、被告人の意思を確認する等のため、裁判所は、必要と認めるときは、被告人の出頭を求めることができる(法 316条の9)。被告人の出頭を求めたときは、速やかにその旨を検察官・弁護人に通知しなければならない(規則 217条の11)。被告人が出頭する最初の公判前整理手続期日において、裁判長は、被告人に対し黙秘権・供述拒否権を告知しなければならない(法 316条の9第3項)。
裁判所には、充実した公判の審理を継続的。計画的かつ迅速に行うことができるよう。公判前整理手続において、十分な準備が行われるようにするとともに、できる限り早期にこれを終結させるよう努め、また、公判の審理予定を定めることが要請されている(法316条の3第1項、規則217条の2第1項)。他方、訴訟関係人は、手続の目的が達せられるよう、相互に協力するとともに、その実施や審理予定の策定に関し、裁判所に進んで協力しなければならない(法316条の3第2項、規則217条の2第2項)。
*法制審議会の答申した要納(骨子)「第2-2」は、映像と音声の送受信による公判前理手続期日等への出席・出頭について、大要、そのような改正案を示している。
(2) 検察官・弁護人・裁判長ではない裁判官の出席・出頭
ア 裁判所は、相
当と認めるときは、検察官及び弁護人の意見を購き、同一番内(裁判長が公判前装理手続期日または期日間整理手続期日(以下「公判前整理手続期日等」という。)における手続を行うために在席する場所と同一の構内をいう。イ及び(2)において同じ。)以外にある場所であって適当と認めるものに検察官または弁護人を在席させ。映像と音声の送受信により相手の状態を相互に認識しながら通話をすることができる方法によって、公判前盤理手続期日等における手続を行うことができる。この場合において、その場所に在席した検察官または弁護人は、その公判前髪理手統期日等に出頭したものとみなす。イ裁判所は、同一構内以外にある場所に合議体の構成員を在席させ,映像と音声の送受信により相手の状態を相互に認識しながら通話することができる方法によって、公判前理手続期日等における手続を行うことができる。
(2)被告人の出頭裁判所は、相当と認めるときは、検察官及び被告人または弁護人の意見を聴き、同一構内以外にある場所であって適当と認めるものに被告人を在席させ、映像と音声の送受により相手の状態を相互に認識しながら通話をすることができる方法によって、公判前整理手期日等における手続を行うことができる。
(2)手続の主宰者を受訴裁判所としたのは、この手続で行われる手点整理や証拠決定,審理計画策定等が、すべて当該事件の公判審理の在り方を決定するので、当該事件の公判運営に責任を負う受訴裁判所が主宰するのが必要かつ合理的と考えられたからである。
受訴裁判所には、手続の主宰者として、第1回公判期日前の段階において、当該事件における事者の予定主張や立証計画と立証構造、さらに事件に関係する証拠に接する機会が生じるが、法の要請する予断防止原則の趣意は、起訴状一本主義の規定(法 256条6項)に具現されているとおり、公判審理開始前に、裁判所が、一方的な形で証拠に接し、そこから捜査段階の心証を引き継ぐのを禁止して、裁判所があらかじめ事件の実体に関する一方的心証を形成するのを防止することにある(第2編公訴第2章13)。公判前整理手続は、両当事者が対等に参加・関与する手続として構成されており、その目的は争点・証拠整理と審理計画の策定であるから、裁判所が事件の実体についてあらかじめ心証形成することはない。主宰者たる受訴裁判所は、この目的達成のため、基本的には、両当事者の予定主張や立証計画等に接するのであり、主張は証拠ではない。また、後記のとおり、この手続においては、裁判所は第1回公判期日前であっても証拠決定や証拠開示に関する裁定を行うことがあり、その際には証拠自体に接することになるが、それは、証拠能力の有無や証拠開示の要件の有無の判断のため、その限度で証拠を確認するのであり、そこから直接、当該証拠の信用性の評価や美体に関する心証を形成するのではない。それ故、受訴裁判所が公判前理手続を主宰する構成は、予断防止原則に抵触するものではない。
*裁判員裁判との関係で、愛訴裁判所を構成する職業裁判官と裁判員との「情報格差」を問題視する議論があるが、理由がない。公判前整理手続に関与して両当事者の予定主張に接し、証拠決定や審理計画の策定等に携わった職業裁判官と、公判審理に際してはじめて選任される裁判員との間に、審理開始時点で当該事件に関し認知している情報に格差があるのは制度上当然である。そして、両当事者の主導する公判審理の進行状況を勘案し、公判前整理手続において知り得た両当事者の立証計画や立証構造に関する情報をも踏まえて、正確な事実認定・事案解明に向けて審理と評議を的確に進行させるのは、裁判員裁判において職業裁判官に期待される当然の役割である(裁判員法 66条5項参照)。