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探偵の知識

公判手続き|公判の準備|公判前整理手続|公判審理における特例等

2025年11月19日

『刑事訴訟法』 酒卷 匡著・2024年9月20日
ISBNISBN978-4-641-13968-8

公判前理手続が実施された事件については、次のとおり、公判期日の手続に関していくつかの特例がある。
(a) 証拠調べ請求の制限公判審理において新たな証拠調べ請求を無制限にすることができるとすれば、新たな主張を誘発して争点整理の実効性が損なわれ、相手方の反証準備のために公判審理を中断せざるを得なくなるなど、策定した審理計画の実現が困難になる。そこで法は、公判前整理手続に付された事件については、検察官及び被告人または弁護人は、やむを得ない事由によって請求することができなかったものを除き、手続の終了後には、証拠調べを請求することができないとする(法316条の32第1項)。この制限は、裁判所が必要と認めるときに、職権で証拠調べをすることを妨げるものではない(法316条の32第2項)。
当事者が公判前整理手続で請求しなかった証拠の取調べを請求するには、やむを得ない事由で取調べ請求できなかったことを疎明しなければならず(規則217条の32),請求は、やむを得ない事由がやんだ後、できる限り速やかに行わなければならない(規則 217条の33)。「やむを得ない事由」とは、例えば、公判前整理手続の段階で証拠の存在自体を知らなかったことがやむを得なかったといえる場合,証人が所在不明であった場合等、証拠調べ請求が現実的に不可能であった場合のほか、公判前整理手続における相手方の主張や証拠関係等に照らし、その時点においては証拠調べ請求の必要がないと考えたことについて十分な理由があると認められる場合等が想定される。
なお、公判前整理手続終了後の「新たな主張」を制限する規定はないが、前記判例(4(d)*】の説示するように、制度目的・趣旨から、これが制限されることはあり得る。
(b) 必要的弁護前記のとおり、公判前整理手続においては、弁護人が必要的であり、それに引き続く公判手続においても、弁護人が必要的となる(法316条の29)。
(c) 被告人側の冒頭陳述公判前整理手続に付された事件については、被告人または弁護人は、証拠により証明すべき事実その他の事実上及び法律上の主張があるときは、検察官の冒頭陳述に引き続き、これを明らかにしなければならない(法316条の30)。被告人側主張の内容を公判期日における被告人側の冒頭陳述として明らかにし、その後の証拠調べの争点を明確にするため、被告人側の冒頭陳述が必要的とされているのである。
(a) 公判前整理手続の結果の顕出その他公判前整理手続は非公開であるが、これに付された事件については、裁判所は、公判期日において被告人側の冒頭陳述が終わった後、公判前整理手続の結果を明らかにしなければならない(注316条の31第1項)。結果の顕出は、公判前整理手続調書の期読または要旨の告知によって行われる(規則217条の31)。
なお、裁判所は、公判審理を公判前整理手続において定められた予定に従って進行させるよう努めなければならず,訴訟関係人は、公判審理が公判前整理手続において定められた予定に従って進行するよう。裁判所に協力しなければならない(規則 217条の30)。