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探偵の知識

公判手続き|公判期日の手続|公判期日における証拠調べー総説|証拠調べに関する異議等

2025年11月19日

『刑事訴訟法』 酒卷 匡著・2024年9月20日
ISBNISBN978-4-641-13968-8

(1)検察官、被告人または弁護人は、証拠調べに関し異議を申し立てることができる(法309条1項)。訴訟関係人の行為が訴訟法規の定めを避した場合に、これを指摘し、その是正を求めることにより当事者が自己の利益を守るための不服申立てである。異議申立ての対象となるのは、証拠開べに関する行為全般に及び、冒頭陳述、証拠調べ請求の時期・方法、証拠決定、証拠調べの範期・方法・順序、証拠能力などに及ぶ。裁判所、裁判官の行為だけでなく、訴設関係人の行為に対しても申立てができ、また。作為・不作為を問わない。
(2)対象となる行為が法令に違反している場合はもとより、その行為が相当でないという場合でも異議の理由となる。ただし,証拠調べに関する決定に対しては、相当でないことを理由とする異議申立ては許されない(規則 205条の1項)。これは、証拠決定の際に、既に当事者の意見を悪いているので(税別190条2項),再度相当性についての異議申立ては認めない趣意である。
異議の申立ては、個々の行為。処分または決定ごとに、簡潔にその理由を示して直ちにしなければならない(規則205条の2)。公判期日においては、まず「異議あり」と述べて裁判所の注意を喚起し。そのうえで異議の理由を述べるのが通例である。
(3) 異議の申立てに対し、裁判所は遅滞なく決定をしなければならない(法309条3項、規則 205条の3)。時機に遅れた申立て、訴訟遅延目的のみでなされたことの明らかな申立て、その他不適法な申立ては、決定で下しなければならない。ただし。時機に遅れた申立てであっても、申立事項が重要であり、これに対する判断を示すことが相当と認めるときは、時機に遅れたことを理由としてこれを却下してはならない(規則205条の4)。申立てを理由がないと認めるときは決定で棄却しなければならない(規則205条の5)。
裁判所は、異議の申立てに理由があると認めるときは、申立ての対象となった行為の中止,撤回、取消しまたは変更を命ずるなど申立てに対応する決定をしなければならない(規則 205条の6第1項)。既に取調べ済みの証拠につき証拠とすることができないと判断したときは、その全部または一部を証拠から排除する決定をしなければならない(規則 205条の6第2項)。これを証拠の排除決定と称する。なお、異議申立てがない場合でも、取り調べた証拠が証拠とすることができないものであることが判明したときは、裁判所は、職権で排除決定をすることができる(規則 207条)。異議申立てに対して決定をするときは、訴訟関係人の陳述を聴くことを要する(規則 33条1項)。
なお、異議の申立てについて決定があったときは、その決定で判断された事項については、重ねて異議を申し立てることはできない(規則 206条)。
(4)証拠調べに関する異議とは別に、検察官。被告人または弁護人は、裁判長の処分に対しても異議を申し立てることができる(注309条2項)。裁判長の処分が証拠調べに関するものであるときは、前記の異議申立てによることになるので(法30条1年)、ここではそれ以外の処分が異議の対象となる。裁判長の処分として重要なものには、法廷察権に関するもの(法287条・288条)と訴訟指揮権に関するもの(法 294条・295条、規則208条)がある〔第2章14]。
この場合の異議申立ては、処分に法令の違反があることを理由とする場合に限られ、不相当を理由として異議申立てをすることは許されない(規則205条2
項)。
(5)実際上は、公判期日における当事者の申立てが正式な異議申立てなのか。
単に裁判長の訴訟指揮権の発動(法294条)を促す注意喚起にとどまるのか。
必ずしも明らかでないことが少なくない。証人尋問の際の誘導尋問に対するように即時の対応が要求される場合には、後者に当たるものとして裁判長の訴訟指揮権の範囲内で処理されるのが通例である〔Ⅲ 4(2)〕