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探偵の知識

公判手続き|公判期日の手続|被害者等による意見陳述及び被害者参加等一|被害者参加制度

2025年11月19日

『刑事訴訟法』 酒卷 匡著・2024年9月20日
ISBNISBN978-4-641-13968-8

(1) 被害者参加制度とは、一定の罪の被害者等や被害者の法定代理人が、裁判所の許可を得て、「被害者参加人」として刑事裁判に参加し、公判期日に出席すると共に、証人尋問。被告人質問等の一定の訴訟活動を自ら行うものである。2007(平成19)年法改正により導入された。被害者参加人は、刑事訴訟の当事者ではない。犯罪被害者等の刑事手続への関与に対する適切な要望の実現には、当事者たる検察官との緊密な連携が要請される。
(2)裁判所は、①故意の狙罪行為により人を死傷させた罪、②不同意わいせつ及び不同意性交等の罪、監護者わいせつ及び監護者性交等の罪,業務上過失致死傷・重週失致死傷の罪、逮捕及び監禁の罪、略取誘拐及び人身売買等の罪③その犯罪行為に②の罪を含む罪、④過失運転致死傷罪等、⑤①ないし③の罪の未遂罪に係る被告事件の被害者等もしくは当該被害者の法定代理人またはこれらの者から委託を受けた弁護士から、被告事件の手続への参加の申出があるときは、被告人または弁護人の意見を聴き、北罪の性質、被告人との関係その他の事情を考慮し、相当と認めるときは、決定で、当該被害者等または当該被害者の法定代理人の被告事件の手織への参加を許す(法316条の33第1項)。
参加を許された者を「被害者参加人」と称する。
手続参加の申出は、あらかじめ検察官にしなければならず、検察官は、意見を付して、この申出を裁判所に通知する(法316条の33第2項)。
裁判所は、被害者参加人が当該被告事件の被害者等に該当しないことが判明したとき、罰条が撤回・変更されたため当該被告事件が対象事件に該当しなくなったとき、または犯罪の性質、被告人との関係その他の事情を考慮して手続への参加を認めるのが相当でないと認めるに至ったときは、参加の許可を取り消さなければならない(法316条の33第3項)。
* 被害者参加人の委託を受けた弁護士は、被害者参加人と同様の権限を有する。被害者等は、一般に法的知識が十分でないため、公判審理の状況を的確に把握し、有罪立証を目標に活動する検察官と緊密に連携しつつ適切に刑事手続に参加するためには、専門家である弁護士の援助が必要な場合があると考えられたためである。また、参加を希望しながらも、自ら参加することが困難な状況にある被害者等に代わって、その希望に即した活動をする役割が弁護士に期待される場合もある。なお、被害者参加人の資力が乏しい場合であっても弁護士の援助を受けられるようにするため、裁判所が被害者参加弁護士を選定し、国がその報酬及び費用を負担すると共に、日本司法支援センターが被害者参加弁護士の候補者を裁判所に通知する業務等を行うこととされている(犯罪被害者保護法11条~18条)。
(3) 被害者参加人またはその委託を受けた弁護士(以下「被害者参加人等」という)は、次のような権限を有する。
①公判期日への出席
被害者参加人等は、公判期日に出席することができる(法316条の34第1項)。法廷内の検察官席隣に着席するのが通例である。ただし、裁判所は、審理の状況、被害者参加人等の数その他の事情を考慮して、相当でないと認めるときは、公判期日の全部または一部への出席を許さないことができる(法 316条の34第4項)。
②検察官の権限行使に対する意見被害者参加人等は、検察官に対し、北該被告事件についての刑訴法の規定による検察官の権限の行使(例,控訴、訴因の設定・変更等)に関し、意見を述べることができる。この場合。検察官は、当該権限を行使しまたは行使しないこととしたときは、必要に応じ,当該意見を述べた者に対し、その理由を説明しなければならない(法316条の35)。
③証人の尋問裁判所は、証人を尋問する場合において、被害者参加人等から、その証人を尋問することの申出があるときは、被告人または弁護人の意見を職き、審理の状況や申出に係る尋問事項の内容等の諸事情を考慮し、相当と認めるときは、被害者参加人等の尋問を許す。ただし、尋間は、犯罪事実に関するものを除く一般情状に関する事項(例.被告人やその親族による示談や謝罪の状況等)について証人が既にした供述の証明力を争い借用性を減殺するために必要な事項に限られる(法316条の36第1項)。証人尋問の申出は、検察官の尋問が終わった後(検察官の尋問がないときは、被告人または弁護人の尋問が終わった後)直ちに、尋問事項を明らかにして、検察官にしなければならず、検察官は、当該事項について自ら尋問する場合を除き、意見を付して、尋問の申出を裁判所に通知する(法316条の36第2項)。
④被告人に対する質問裁判所は、被害者参加人等から、その者が被告人に対して質問をすることの申出があるときは、被告人または弁護人の意見を聴き、被害者参加人等が意見の陳述(被害に関する心情その他の意見陳述〔法292条の2〕・事実または法律の適用についての意見陳述〔316条の38])をするために必要があると認める場合であって、審理の状況、申出に係る質問事項の内容等の諸事情を考慮し、相当と認めるときは、被害者参加人等の質問を許す(法316 条37第1項)。前記証人尋問と異なり、質問内容は情状に関する事項に限られない。被告人質問の申出は、あらかじめ、質問事項を明らかにして、検察官にしなければならず、検察官は、当該事項について自ら質問する場合を除き、意見を付して、質問の申出を裁判所に通知する(法316条の37第2項)。
⑤事実または法律の適用についての意見の陳述裁判所は、被害者参加人等から、事実または法律の適用について意見を陳述することの申出がある場合において、審理の状況等の諸事情を考慮し、相当と認めるときは、公判期日において,検察官の意見の陳述(論告・求刑)の後に、因として特定された事実の範囲内で、被害者参加人等の意見の陳述を許す(法316条の38第1項,裁判長による陳述の制限について同条3項参照)。この意見陳述(その意義は、前記1の心情・意見の陳述とは異なり、後記論告・弁論と同様である)は,検察官の論告や弁護人の弁論と同様に意見であるから、証拠とはならない(法316条の38第4頭)。意見陳述の申出は、あらかじめ、陳述する意見の要旨を明らかにして、検察官にしなければならず、検祭官は、意見を付して、意見陳述の申出を裁判所に通知する(法316条の38第2項)。
*刑事事件に巻き込まれた被害者等が、当該事件の刑事手続の帰越に深い関心を有するのは当然であり、その心情・意見を公判手続において直接示す機会を設け、また当事者追行主義訴訟の枠内で一定の権限行使を認めるのが、被害者関与の諸制度の趣意である。このような被害者の正当な心情・意見等を適切に考慮勘案した裁判体によって、適正な手続を経て罪を認定された被告人に対し、その所業に相応しい刑が言い渡されることに何ら不当なところはない。故に,被害者関与が厳罰化に繋がるとの短絡的批判には理由がない。
(4) 裁判所は、被害者参加人が公判期日等に出席する場合において、一定の要件の下,被害者参加人への付添い。被害者参加人と被告人との間の蔽及び被害者参加人と傍聴人との間の遮蔽措置をとることができる(法316条の39第1項・4項・5項)。