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探偵の知識

公判手続|裁判員の参加する公判手続|裁判員の選任

2025年11月19日

『刑事訴訟法』 酒卷 匡著・2024年9月20日
ISBNISBN978-4-641-13968-8

裁判所は、毎年、衆議院議員の選挙権を有する18歳以上の者の中から無作為抽出された者で構成される裁判員候補者名簿を作成する(裁判員法 13条・20条〜23条)。
以下では、裁判員候補者名簿から無作為に選ばれ裁判所に呼び出された裁判員候補者の中から、個別事件の審理判決に参加する裁判員を選任する手続を説明する。
(1)裁判所は、裁判員の選任手続に先立ち、裁判員候補者の資格の有無等の判断に必要な質問をするため、質問票を用いることができる(裁判員法 30条)。
裁判員候補者と事件との関係の有無を確認するなど、当事者が裁判員の選任に関する判断材料を得ることができるようにするため、裁判長は,裁判員等選任手続の2日前までに、呼び出した裁判員候補者の氏名を記載した名簿を検察官及び弁護人に送付すると共に、裁判員等選任手続の日に、選任手続に先立ち、裁判員候補者が提出した質問票の写しを検察官及び弁護人に閲覧させる(同法
31条)。
(2)選任手続は、裁判官。裁判所書記官。検察官及び弁護人が出席して行う。
裁判所は、必要と認めるときは、被告人を出席させることができる(裁判員法32条)。手続は非公開である(同法33条1項)。裁判長は、裁判員候補者に対し、裁判員の資格の有無等を判断するため、必要な質問を行う。陪席裁判官または事者は、裁判長に対し、必要と思料する質問をするよう求めることができる。
裁判長は、相当と認めるときは、求められた質問を行う(同法34条1項・2項)。
裁判所は、質問の結果、法定の欠格事由(同法 14条),就職禁止事由(同法15条),事件に関連する不適格事由(同法17条)に該当し、またはその他裁判所が不公平な裁判をするおそれがあると認めた者(同法 18条)について、当事者の請求または職権により、不選任の決定をする(同法34条4項)。また、裁判所は、辞退の申立てをした裁判員候補者について、質問の結果、法定の辞退事由(同法16条)に該当すると認めたときは、不選任の決定をする(同法34条7項)。
さらに、検察官及び被告人は、それぞれ4人の裁判員候補者(ただし、裁判官1人、裁判員4人の合議体で審判する場合は3人。補充裁判員が置かれる場合には、その貝数が1または2人の場合は1人、3または4人の場合は2人、5または6人の場合は3人を加えた員数)につき、理由を示さずに不選任の請求をすることができ、裁判所は、この請求があった裁判員候補者について不選任の決定をする(「理由なし不選任」と称する)(同法 36条)。
以上の手続を経た後、裁判所は、最高裁判所規則で定めるくじその他作為が加わらない方法に従い。不選任の決定がなされなかった裁判員候補者から、裁判員及び補充裁判員を選任する決定をする(同法 37条)。裁判長は、最高裁判所規則で定めるところにより、裁判員及び補充裁判員に対し、その権限、義務その他必要な事項を説明し、裁判員及び補充裁判員は、法令に従い公平誠実に職務を行うことを誓う旨の重替をする(同法39条)。
*2015(平成27)年の法改正により、被害者特定事項の秘匿決定(刑訴法 290条の2)のあった事件の裁判員等選任手続においては、裁判官,検察官,被告人及び弁護人は、裁判員候補者に対し、被害者特定事項を正当な理由なく明らかにしてはならず、また、裁判員候補者または候補者であった者は、裁判員等選任手続で知った被害者特定事項を公にしてはならない旨の規定(裁判員法33条の2)が設けられている。
(3) 選任された裁判員及び補充裁判員は、法令に従い公平誠実にその職務を行うこと(裁判員法9条1項・10条4項),裁判の公正さに対する頼を損なうおそれのある行為や裁判員の品位を害するような行為をしないこと(同法9条3項・4項・10条4項),宜著(同法39条2項),裁判員の関与する判断をするための審理をすべき公判期日ならびに公判準備において裁判所がする証人その他の者の尋間及び検証への出頭の義務(同法 52条)を負うほか、評議に出席し、意見を述べる義務(同法66条2項),構成裁判官の合議による法令の解釈に係る判断・訴訟手続に関する判断に従って職務を行う義務(同法66条4項),判決等の宣告期日に出頭する義務(同法63条1項),評議の秘密その他の職務上知り得た秘密を漏らしてはならない守秘義務を負う(同法9条2項・10条4項・70条1項)。
*法制審議会は、映像と音声の送受による裁判員等選任手続期日への出席・出頭について、次のような要綱((骨子)「第2-2・3」)を示している(1)裁判所は、相当と認めるときは、検察官及び被告人または弁護人の意見を聴き、呼び出すべき裁判員候補者の全部または一部を裁判官及び訴訟関係人が裁判員等選任手続を行うために在席する場所以外の場所であって適当と認めるものに在席させ、映像と音声の送受信により相手の状態を相互に認識しながら通話をすることができる方法によって、裁判員等選任手続を行うことができるとし、この場合、その場所に在席した裁判員候補者は、その裁判員等選任手続の期日に出頭したものとみなす。
(2)裁判所は、相当と認めるときは、検察官及び弁護人の意見を感き、裁判官及び訴訟関係人が裁判員等選任手続を行うために在席する場所以外の場所であって適当と認めるものに被告人を在席させ,映像と音声の送受により相手の状態を相互に認識しながら通話をすることができる方法によって、裁判員等選任手続を行うことができる。