共有
2025年11月19日
『国家試験受験のためのよくわかる判例〔第2版〕』 西村和彦著・2024年9月6日
ISBNISBN 978-4-426-13029-9
ガイダンス
共有とは、複数の者が一定の割合(持分)で1つの物を所有することをいいます。持分とは、各共有者が共有物に対して有する権利の割合をいい、共有者の合意や法律の規定があればそれによりますが、合意や規定がない場合は、各共有者の持分は等しいものと推定されます(民法250条)。
共有者相互間の明渡請求 (最判昭41.5.19)
■事件の概要
Aは、自己が所有する本件土地上に本件建物を建築し、長男Yの夫婦を居住させていたが、その後、(1) Yは、Aの存命中、Aに対し毎月2万円の仕送りをすること、(2) Aは、Yに本件土地・建物を譲渡すること、を互いに約する契約を結んだ。しかし、Yは、数か月仕送りを しただけで、仕送りを止めたため、Aは、契約を解除した。その後、Aが死亡し、Aの妻Xと、Y、Aの次男Zが本件土地建物を共同相続した(持分は、Xが2分の1、Y、Zが各4分の1)。
判例ナビ
XとZは、Yに対し、本件土地建物の明渡しを求める訴えを提起しました。第1審は、建物の明渡しのみ容認したため、双方が控訴しました、控訴審は、XとZの請求を全面的に認容したため、Yが上告しました。
■裁判所の判断
共同相続に基づく共有者の一人であって、その持分の価格が共有物の価格の過半数に満たない者(以下単に少数持分権者という)は、他の共有者の協議を経ないで当然に共有物(本件建物)を単独に占有する権限を有するものでない。…他方、他のすべての相続人がその共有持分を合計すると、その価格が共有物の価格の過半数をこえるからといつて(以下このような共有持分権者らを多数持分権者という)、共有物を現に占有する前記少数持分権者に対し、当然にその明渡を請求することができるものではない。けだし、このような場合、右の少数持分権者は自己の持分によつて、共有物を使用収益する権原を有し、これに基づいて共有物を占有するものと認められるからであつて、この場合、多数持分権者が少数持分権者に対して共有物の明渡を求めることができるためには、その明渡を求める理由を主張し立証しなければならないのである。
解説
本件では、共有者の1人が共有不動産を占有している場合、他の共有者が明渡請求できるかどうかが問題となりました。本判決は、当然に明渡請求できるわけではなく、「明渡を求める理由」を主張立証しなければならないとしました。「明渡を求める理由」は、現行法の下では、各共有者の持分割合の過半数による決定(252条1項)に相当します。
◆この分野の重要判例
共有者の一人による保存行為の抹消登記手続請求 (最判平15.7.11)
不動産の共有者の一人は、その持分権に基づき、共有不動産に対して加えられた妨害を排除することができるところ、不実の持分移転登記がされている場合には、その登記によって共有不動産に対する妨害状態が生じているということができるから、共有不動産について全く実体上の権利を有しないのに持分移転登記を経由している者に対し、単独でその持分移転登記の抹消登記手続を請求することができる。
過去問
最高裁判所の判例では、持分の価格が過半数を超える共有者は、過半数に満たない自己の持分に基づいて現に共有物を占有する他の共有者に対し、当然に共有物の明渡しを請求することができる、明渡しを求める理由を主張し立証する必要はないとした。 (公務員2022年)
不動産共有者の一人は、その持分権に基づき、共有不動産に対して加えられた妨害を排除することができるが、不実の持分移転登記がされている場合であっても、そのことをもって共有不動産が妨害されたとはいえないから、共有不動産について全く実体上の権利を有しないのに持分移転登記を経由している者に対し、単独でその持分移転登記の抹消登記手続を請求することはできない。 (公務員2017年)
× 1. 持分の価格が過半数を超える共有者であっても、当然に共有物の明渡しを請求することができるわけではありません。明渡しを求める理由を主張・立証する必要があります(最判昭41.5.19)。
× 2. 不動産の共有者の一人は、共有不動産について全く実体上の権利を有しないのに持分移転登記を経由している者に対し、単独でその持分移転登記の抹消登記手続を請求することができます(最判平15.7.11)。
共有とは、複数の者が一定の割合(持分)で1つの物を所有することをいいます。持分とは、各共有者が共有物に対して有する権利の割合をいい、共有者の合意や法律の規定があればそれによりますが、合意や規定がない場合は、各共有者の持分は等しいものと推定されます(民法250条)。
共有者相互間の明渡請求 (最判昭41.5.19)
■事件の概要
Aは、自己が所有する本件土地上に本件建物を建築し、長男Yの夫婦を居住させていたが、その後、(1) Yは、Aの存命中、Aに対し毎月2万円の仕送りをすること、(2) Aは、Yに本件土地・建物を譲渡すること、を互いに約する契約を結んだ。しかし、Yは、数か月仕送りを しただけで、仕送りを止めたため、Aは、契約を解除した。その後、Aが死亡し、Aの妻Xと、Y、Aの次男Zが本件土地建物を共同相続した(持分は、Xが2分の1、Y、Zが各4分の1)。
判例ナビ
XとZは、Yに対し、本件土地建物の明渡しを求める訴えを提起しました。第1審は、建物の明渡しのみ容認したため、双方が控訴しました、控訴審は、XとZの請求を全面的に認容したため、Yが上告しました。
■裁判所の判断
共同相続に基づく共有者の一人であって、その持分の価格が共有物の価格の過半数に満たない者(以下単に少数持分権者という)は、他の共有者の協議を経ないで当然に共有物(本件建物)を単独に占有する権限を有するものでない。…他方、他のすべての相続人がその共有持分を合計すると、その価格が共有物の価格の過半数をこえるからといつて(以下このような共有持分権者らを多数持分権者という)、共有物を現に占有する前記少数持分権者に対し、当然にその明渡を請求することができるものではない。けだし、このような場合、右の少数持分権者は自己の持分によつて、共有物を使用収益する権原を有し、これに基づいて共有物を占有するものと認められるからであつて、この場合、多数持分権者が少数持分権者に対して共有物の明渡を求めることができるためには、その明渡を求める理由を主張し立証しなければならないのである。
解説
本件では、共有者の1人が共有不動産を占有している場合、他の共有者が明渡請求できるかどうかが問題となりました。本判決は、当然に明渡請求できるわけではなく、「明渡を求める理由」を主張立証しなければならないとしました。「明渡を求める理由」は、現行法の下では、各共有者の持分割合の過半数による決定(252条1項)に相当します。
◆この分野の重要判例
共有者の一人による保存行為の抹消登記手続請求 (最判平15.7.11)
不動産の共有者の一人は、その持分権に基づき、共有不動産に対して加えられた妨害を排除することができるところ、不実の持分移転登記がされている場合には、その登記によって共有不動産に対する妨害状態が生じているということができるから、共有不動産について全く実体上の権利を有しないのに持分移転登記を経由している者に対し、単独でその持分移転登記の抹消登記手続を請求することができる。
過去問
最高裁判所の判例では、持分の価格が過半数を超える共有者は、過半数に満たない自己の持分に基づいて現に共有物を占有する他の共有者に対し、当然に共有物の明渡しを請求することができる、明渡しを求める理由を主張し立証する必要はないとした。 (公務員2022年)
不動産共有者の一人は、その持分権に基づき、共有不動産に対して加えられた妨害を排除することができるが、不実の持分移転登記がされている場合であっても、そのことをもって共有不動産が妨害されたとはいえないから、共有不動産について全く実体上の権利を有しないのに持分移転登記を経由している者に対し、単独でその持分移転登記の抹消登記手続を請求することはできない。 (公務員2017年)
× 1. 持分の価格が過半数を超える共有者であっても、当然に共有物の明渡しを請求することができるわけではありません。明渡しを求める理由を主張・立証する必要があります(最判昭41.5.19)。
× 2. 不動産の共有者の一人は、共有不動産について全く実体上の権利を有しないのに持分移転登記を経由している者に対し、単独でその持分移転登記の抹消登記手続を請求することができます(最判平15.7.11)。