婚姻
2025年11月19日
『国家試験受験のためのよくわかる判例〔第2版〕』 西村和彦著・2024年9月6日
ISBNISBN 978-4-426-13029-9
ガイダンス
婚姻とは、男女が法律的に結婚することをいいます。婚姻は、戸籍法の定めにしたがって届出をすることによってその効力を生じます(民法739条1項。法律婚主義)。男女が婚姻の意思をもって共同生活を営んでいても、届出がない以上婚姻ではなく、内縁にすぎません。
子を嫡出子とするための婚姻の効力(最判昭44.10.31)
事件の概要
Xは、大阪市の保健所に勤務していた当時、Xと知り合って交際していたが、Xの両親に結婚を反対された。交際は、Xが兵庫県下のZ会社に就職してから続き、Yは、Xの子Aを妊娠すると、出産準備のため、上京してX名義で東京に家を借りて生活するようになった。他方、Xも、休日には上京してYのもとを訪れたり、送金をしてYを援助し、出産後、子に命名した。しかし、Xは、Bとの間に結婚の話が持ち上がり、両親が依然としてYとの結婚に反対していることもあって、Bと結婚する意思を固めた。そこで、Xは、Yとの話し合いで、Aに嫡出子の地位を与えるため、いったんYと婚姻してAを夫婦の子とした後に離婚することを承諾した。
判例ナビ
その後、XとYは、Yの婚姻届を提出し、Bと結婚式を挙げて事実上の婚姻生活を始めましたが、Yとの間で離婚が遅々として進まなかったため、Yに対し、婚姻無効の訴えを提起しました。第1審、控訴審ともにXの請求を認容したため、Yが上告しました。
裁判所の判断
所論は、民法742条1号にいう「当事者間に婚姻をする意思がないとき」とは、法律上の夫婦という身分関係を設定する意思がない場合と解すべきである旨主張し、右にいう「当事者間に婚姻をする意思がないとき」とは、真に社会観念上夫婦であると認められる関係の設定を欲する効果意思を有しない場合を指すものと解すべきであり、したがってたとえ婚姻の届出自体について当事者間に意思の合致があり、ひいて当事者間に一応、所謂法律上の夫婦という身分関係の設定を欲する意思はあったと認めうる場合であっても、それが、単に他の目的を達するための便法として仮託されたものにすぎないものであって、前記のように真に夫婦関係の設定を欲する効果意思がなかった場合には、婚姻はその効力を生じないものと解すべきである。
これを本件についてみるに、原判決(その引用する第一審判決を含む。以下同じ。)の認定するところによれば、XとYとの間には、Aに将来両者の嫡出子としての地位を得させるための便法として婚姻の届出について意思の合致はあったが、Xには、Yとの間に真に前述のような夫婦関係の設定を欲する効果意思はなかったというのであるから、右婚姻はその効力を生じないとした原判決の判断は正当である。
解説
当事者間に婚姻をする意思がない婚姻は、無効です(民法742条1号)。本判決は、「婚姻をする意思」を、単に「法律上の夫婦という身分関係を設定する意思」ではなく、「真に社会観念上夫婦であると認められる関係の設定を欲する効果意思」と捉え、Xにはこのような意思が認められないことから、XY間の婚姻を無効とし、Yの上告を棄却しました。
◆意思無能力の判断
将来婚姻することを約し、性交渉を続けてきた者が、婚姻意思を失い、かつ、その意思に基づいて婚姻の届出を作成したとは、うかがい能わざる受動的態度を示していたとしても、その婚姻届出前に、精神錯乱など特段の事情のないかぎり、右届書の受理により婚姻は有効に成立する…。
解説
本件は、婚姻の意思をもって交際していたXが、病気で入院中、YとXの兄Aに婚姻届を出すよう求めたため、Xの署名をAが代筆しYに婚姻届を作成し区役所に提出したところ、その時、Xは意識不明に陥っており翌日死亡したという事案です。
婚姻とは、男女が法律的に結婚することをいいます。婚姻は、戸籍法の定めにしたがって届出をすることによってその効力を生じます(民法739条1項。法律婚主義)。男女が婚姻の意思をもって共同生活を営んでいても、届出がない以上婚姻ではなく、内縁にすぎません。
子を嫡出子とするための婚姻の効力(最判昭44.10.31)
事件の概要
Xは、大阪市の保健所に勤務していた当時、Xと知り合って交際していたが、Xの両親に結婚を反対された。交際は、Xが兵庫県下のZ会社に就職してから続き、Yは、Xの子Aを妊娠すると、出産準備のため、上京してX名義で東京に家を借りて生活するようになった。他方、Xも、休日には上京してYのもとを訪れたり、送金をしてYを援助し、出産後、子に命名した。しかし、Xは、Bとの間に結婚の話が持ち上がり、両親が依然としてYとの結婚に反対していることもあって、Bと結婚する意思を固めた。そこで、Xは、Yとの話し合いで、Aに嫡出子の地位を与えるため、いったんYと婚姻してAを夫婦の子とした後に離婚することを承諾した。
判例ナビ
その後、XとYは、Yの婚姻届を提出し、Bと結婚式を挙げて事実上の婚姻生活を始めましたが、Yとの間で離婚が遅々として進まなかったため、Yに対し、婚姻無効の訴えを提起しました。第1審、控訴審ともにXの請求を認容したため、Yが上告しました。
裁判所の判断
所論は、民法742条1号にいう「当事者間に婚姻をする意思がないとき」とは、法律上の夫婦という身分関係を設定する意思がない場合と解すべきである旨主張し、右にいう「当事者間に婚姻をする意思がないとき」とは、真に社会観念上夫婦であると認められる関係の設定を欲する効果意思を有しない場合を指すものと解すべきであり、したがってたとえ婚姻の届出自体について当事者間に意思の合致があり、ひいて当事者間に一応、所謂法律上の夫婦という身分関係の設定を欲する意思はあったと認めうる場合であっても、それが、単に他の目的を達するための便法として仮託されたものにすぎないものであって、前記のように真に夫婦関係の設定を欲する効果意思がなかった場合には、婚姻はその効力を生じないものと解すべきである。
これを本件についてみるに、原判決(その引用する第一審判決を含む。以下同じ。)の認定するところによれば、XとYとの間には、Aに将来両者の嫡出子としての地位を得させるための便法として婚姻の届出について意思の合致はあったが、Xには、Yとの間に真に前述のような夫婦関係の設定を欲する効果意思はなかったというのであるから、右婚姻はその効力を生じないとした原判決の判断は正当である。
解説
当事者間に婚姻をする意思がない婚姻は、無効です(民法742条1号)。本判決は、「婚姻をする意思」を、単に「法律上の夫婦という身分関係を設定する意思」ではなく、「真に社会観念上夫婦であると認められる関係の設定を欲する効果意思」と捉え、Xにはこのような意思が認められないことから、XY間の婚姻を無効とし、Yの上告を棄却しました。
◆意思無能力の判断
将来婚姻することを約し、性交渉を続けてきた者が、婚姻意思を失い、かつ、その意思に基づいて婚姻の届出を作成したとは、うかがい能わざる受動的態度を示していたとしても、その婚姻届出前に、精神錯乱など特段の事情のないかぎり、右届書の受理により婚姻は有効に成立する…。
解説
本件は、婚姻の意思をもって交際していたXが、病気で入院中、YとXの兄Aに婚姻届を出すよう求めたため、Xの署名をAが代筆しYに婚姻届を作成し区役所に提出したところ、その時、Xは意識不明に陥っており翌日死亡したという事案です。