探偵の知識

離婚

2025年11月19日

『国家試験受験のためのよくわかる判例〔第2版〕』 西村和彦著・2024年9月6日
ISBNISBN 978-4-426-13029-9

ガイダンス
離婚とは、夫婦が生存中に当事者の意思によって婚姻を解消することをいいます。離婚には、当事者の協議による協議離婚、家庭裁判所の調停による調停離婚、調停が成立しない場合に、家庭裁判所の審判による審判離婚、人事訴訟手続による裁判離婚があります。

有責配偶者からの離婚請求(最大判昭62.9.2)
事件の概要
Xは、1937(昭和12)年にYと結婚し、当初は平穏な婚姻関係を続けていたが、Yが1949(昭和24)年にXの勤務先の同僚であったAと肉体関係を持ったのを契機として不和となった。Xは、同年8月頃からAと同棲するようになり、以後今日まで別居の状態にある。この間、Aとの間にB、C2人の子をもうけ、いずれも認知している。Yは、Xとの別居後もX宅に居住していたが、1950(昭和25)年、Xから生活費を保障する趣旨で処分が与えられていたX名義の家屋を売却し、その代金を生活費に充て、その後はXからは生活費等の一切を受けず、古い建物の応急修理をして生活費に充て、Yの母親、Yの実弟の援助等により現在も生活を維持している。Xは、1978(昭和53)年頃までAの実家に勤務するなどして生活を支えていたが、現在は無職で腎臓病を患い、他方、Xは、2つの会社の代表取締役を務める等経済的に安定した生活を送っている。
Xは、1951(昭和26)年頃東京地方裁判所にYとの離婚を求める訴えを提起したが、同裁判所は、XとYとの婚姻関係が破綻したのはXがAと同棲を始めたこと等に原因があるから、右離婚請求は有責配偶者からの請求に該当するとして、これを棄却する旨の判決をし、この判決は1954(昭和29)年に確定した。

判例ナビ
1983(昭和58)年、Xは、Yを自然回復ね、離婚に同意するよう求めるし、Yとの離婚をめぐる調停の申立てをしました。右調停においては、Yとの離婚は不成立に終わったが、XとYとの離婚をめぐる調停の申立てをしました。右調停においては、Yとの離婚は不成立に終わったが、Yとの離婚をめぐる調停の申立てをしました。右調停においては、Yとの離婚は不成立に終わったが、Yとの離婚をめぐる調停の申立てをしました。

裁判所の判断

婚姻の本質は、両性が永続的な精神的及び肉体的結合を目的として真摯な意思をもって共同生活を営むことにあるから、夫婦の一方又は双方が右の意思を確定的に喪失するとともに、夫婦としての共同生活の実体を欠くようになり、その回復の見込みが全くない状態に至った場合には、当該婚姻は、もはや社会生活上の実質的基礎を失っているものというべきであり、かかる状態において婚姻の存続を強いることは、かえって不自然であるということができよう。しかしながら、離婚は、道徳的・法的秩序としての婚姻を廃絶するものであるから、離婚請求は、正義・公平の観念、社会的倫理観に反するものであってはならないことは当然である。従って、この意味で離婚請求は、身分法を包含する民法全体の指導理念たる信義誠実の原則に照らしても是認されるものであることを要するものといわなければならない。

そこで、5号所定の事由による離婚請求がその事由につき専ら責任のある一方の当事者(以下「有責配偶者」という。)からされた場合において、当該請求が信義誠実の原則に照らして許されるものであるかどうかを判断するに当たっては、有責配偶者の責任の態様・程度を考慮すべきであるが、相手方配偶者の婚姻継続についての意思及び請求者に対する感情、離婚を認めた場合における相手方配偶者の精神的・社会的・経済的状態及び夫婦間の子、殊に未成熟の子の監護・教育・福祉の状況、別居後に形成された生活関係、たとえば夫婦の一方又は双方が既に内縁関係を形成している場合にはその相手方や子の状況等が斟酌されなければならず、更には、時の経過とともに、これらの諸事情がそれ自体あるいは相互に影響し合って変容し、また、これらの諸事情のもつ社会的意味ないしは評価が変化することをも免れないから、時の経過がこれらの諸事情に与える影響も考慮されなければならないのである。
そうであれば、有責配偶者からされた離婚請求であっても、夫婦の別居が両当事者の年齢及び同居期間との対比において相当の長期間に及び、その間に未成熟の子が存在しない場合には、相手方配偶者が離婚により精神的・社会的・経済的に極めて過酷な状態におかれる等離婚請求を認容することが著しく社会正義に反するといえるような特段の事情の認められない限り、当該請求は、有責配行者からの請求であるとの一事をもって許されないとすることはできないものと解するのが相当である。けだし、右のような場合には、もはや5号所定の事由に係る責任も、相手方配偶者の婚姻継続についての意思も、相手方配偶者の精神的・社会的・経済的状態及び夫婦間の子、殊に未成熟の子の監護・教育・福祉の状況、別居後に形成された生活関係、たとえば夫婦の一方又は双方が既に内縁関係を形成している場合にはその相手方や子の状況等が斟酌されなければならず、更には、時の経過とともに、これらの諸事情がそれ自体あるいは相互に影響し合って変容し、また、これらの諸事情のもつ社会的意味ないしは評価が変化することをも免れないから、時の経過がこれらの諸事情に与える影響も考慮されなければならないのである。

◆生活保護のための離婚の効力(最判昭57.3.26)
本件離婚の届出が、法律上の婚姻関係を解消する意思の合致に基づいてされたものである以上、本件離婚を無効とすることはできない。けだし、法律上の婚姻関係の解消に際し、その届出に当たり、その過程に所得の違法はない。

解説
本件は、生活保護を受給している夫と収入のある妻を合わせて生活費に充てていたXが、市の担当者から、Xの収入を生活保護金から差し引かないと不正受給になると言われ、従来の生活保護金の受給を継続するための方策として提出した離婚届の効力が争われたという事案です。本判決は、本件離婚の届出が、法律上の婚姻関係を解消する意思の合致に基づいてされたものであって、本件離婚を無効とすることはできないとしました。

財産分与と離婚慰謝料の関係(最判昭46.7.23)
事件の概要
1960(昭和35)年、Xは、Yと婚姻し、子Aをもうけたが、Yとその他がXと不和し、YがXに暴言や暴力をふるったことから、Aを置いて実家に戻り、その後、離婚の訴えを提起した。1965(昭和40)年、裁判所は、離婚原因につきYに相当程度の責任があるとして離婚を認めるとともに、Aの親権者としてYを指定し、YからXに財産分与としてタンス1棹、水屋1個を与えることを定めた判決を下し、同判決が確定した。

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その後、Xは、Yに対し、Yの虐待によって離婚を余儀なくされたことによる精神的苦痛に対する慰謝料として30万円を請求する訴えを提起しました。第1審、控訴審ともに、Yに慰謝料15万円を支払うことを命じたため、Yが上告しました。

裁判所の判断
本件離婚請求は、YとXとの間の婚姻生活の破綻を生ずる原因となったYの虐待等、Yの有責行為、自由な意思により離婚を行うことやこれをやむなくされ精神的苦痛の慰謝料を請求することができるのはいうまでもないが、婚姻が成立してはじめて評価されるものであり、かつ、個別の違法行為がこれとは別に損害賠償の対象となりうることは別として、離婚原因たる有責行為とそれにより婚姻が破綻に至り離婚せざるをえなくなったこと自体についての精神的苦痛の慰謝料と財産分与とはその制度の趣旨、目的、要件、効果を異にするから、離婚による慰謝料請求権が財産分与請求権と相容れないものであるということはできず、財産分与がなされても、慰謝料請求を妨げられるものではなく、また、右財産分与がされたからといつて慰謝料請求権が消滅するものでもない。

この分野の重要判例
◆離婚における財産分与と婚姻費用の分担(最判昭53.11.14)
離婚における財⚫︎財産分与と婚姻費用分担(最判昭53.11.14)離婚における財産分与請求権の額及び方法を定めるにあたつては、民法771条、768条3項の規定の趣旨に則り、婚姻継続中における過去の婚姻費用の分担の当否のいかんはかならずしも考慮の対象とされないのが相当である。