相続財産の寄附
2025年11月19日
Q&A 弁護士のための相続税務70
中央経済社
Q: 相続した財産の一部を公益法人へ寄附したいと考えていますが、相続税は軽減されるのでしょうか 。
A: 相続又は遺贈により取得した財産を、相続税の申告期限までに一定の法人等に寄附した場合には、その寄附をした財産は相続税が非課税とされる場合があります 。ただし、寄附した財産が非課税となる寄附先は限定されているため、その寄附先が対象の法人かについて事前に確認しておくことが大切です 。
解説
(1) 国等に対して相続財産を贈与した場合の相続税の非課税等
相続又は遺贈で取得した財産を、相続税の申告期限までに一定の法人等に対して贈与した場合には、その財産に係る相続税が非課税となります(措法70①) 。この特例は厳格に要件が規定されているため、その注意点について解説します 。
① 相続税の申告期限までに寄附をしなければならない
この特例の適用を受けるためには、相続税の申告期限までに寄附を終えていることを要します 。寄附の完了が申告期限後になると非課税の適用は受けられないため、寄附を行おうと考えた場合、必要な期間の確認や寄附先の意向についても確認しなければなりません 。
② 相続財産をそのまま寄附しなければならない
本特例は「相続又は遺贈で取得した財産」の寄附について適用が受けられるものです 。換金した後の金銭は、「相続又は遺贈で取得した財産」に当たらないため、本特例の適用は受けられません 。したがって、寄附をする財産についても本特例の対象となるかを確認の上、実行する必要があります 。
③ 特例が適用できる対象法人等
本特例の適用を受けるためには、要件を満たす寄附先に対して寄附をしなければなりません 。その寄附先は以下に限る旨定められています (措法70①,措令40の3) 。なお、宗教法人は、本特例の対象法人等には含まれていませんので注意が必要です(相続税の課税対象とはなりません。)
イ 国又は地方公共団体
ロ 独立行政法人
ハ 国立大学法人及び大学共同利用機関法人
二 一定の地方独立行政法人
ホ 公立大学法人
ヘ 自動車安全運転センター、日本司法支援センター、日本私立学校振興・共済事業団, 日本赤十字社及び福島国際研究教育機構
ト 公益社団法人及び公益財団法人
チ 一定の私立学校法人
リ 社会福祉法人
ヌ 更生保護法人
ル 認定NPO法人
④ 申告書への記載事項等
本特例の適用を受けるためには、相続税の申告書に本特例の適用を受ける旨の記載をした上で、国、地方公共団体又は特定の公益法人が発行した以下の内容が記載された書類を添付しなければなりません(措法70⑤, 措規23の3②) 。
イ 寄附を受けた旨
ロ 寄附年月日
ハ 寄附財産の明細
二 寄附財産の使用目的
(2) 適用除外
上記の通り、本特例は限られた法人等に対して、相続財産の寄附をすることによって、相続税が非課税となります 。ただし、この寄附の結果、その贈与を行った人やその親族等の相続税又は贈与税の負担が不当に減少する結果と認められる場合には、非課税の適用を受けることができません 。
また、寄附先の対象となる法人が、その寄附を受けた日から2年を経過した日までに特例対象法人に該当しないこととなった場合や、寄附を受けた財産を同日までに公益目的の事業の用に供していない場合にも非課税の適用は受けられません(措法70②) 。
そのほか、法人を設立するために行った寄附や認定を受けていないNPO法人への寄附も適用を受けることができないため、注意を要します 。
(3) 所得税との関係
所得税法では、寄附金控除という所得控除が設けられています(所法78) 。これは国や地方公共団体, 特定公益増進法人等に対して、寄附金を支出した場合に、一定の金額について所得控除ができる制度です 。
近年では、「ふるさと納税」という寄附を仄聞しますが、これは所得税の寄附金控除の対象となり、また、住民税における寄附金税額控除の対象となります(地税法37の2①、314の7①) 。地方公共団体は、上記(1)の相続財産の対象寄附先に含まれることから、相続税の計算上、地方公共団体へ寄附をした額は相続税が非課税となり、かつ、寄附者(相続人)は、所得税や住民税の計算上, ふるさと納税を利用した節税が可能になります 。
なお、地方公共団体以外の寄附先でも、寄附金控除の対象となる法人等への寄附であれば、同様の節税が可能です 、相続財産の寄附先の選定をする際には、寄付金控除の対象策も確認しておくとよいでしょう。
A: 相続又は遺贈により取得した財産を、相続税の申告期限までに一定の法人等に寄附した場合には、その寄附をした財産は相続税が非課税とされる場合があります 。ただし、寄附した財産が非課税となる寄附先は限定されているため、その寄附先が対象の法人かについて事前に確認しておくことが大切です 。
解説
(1) 国等に対して相続財産を贈与した場合の相続税の非課税等
相続又は遺贈で取得した財産を、相続税の申告期限までに一定の法人等に対して贈与した場合には、その財産に係る相続税が非課税となります(措法70①) 。この特例は厳格に要件が規定されているため、その注意点について解説します 。
① 相続税の申告期限までに寄附をしなければならない
この特例の適用を受けるためには、相続税の申告期限までに寄附を終えていることを要します 。寄附の完了が申告期限後になると非課税の適用は受けられないため、寄附を行おうと考えた場合、必要な期間の確認や寄附先の意向についても確認しなければなりません 。
② 相続財産をそのまま寄附しなければならない
本特例は「相続又は遺贈で取得した財産」の寄附について適用が受けられるものです 。換金した後の金銭は、「相続又は遺贈で取得した財産」に当たらないため、本特例の適用は受けられません 。したがって、寄附をする財産についても本特例の対象となるかを確認の上、実行する必要があります 。
③ 特例が適用できる対象法人等
本特例の適用を受けるためには、要件を満たす寄附先に対して寄附をしなければなりません 。その寄附先は以下に限る旨定められています (措法70①,措令40の3) 。なお、宗教法人は、本特例の対象法人等には含まれていませんので注意が必要です(相続税の課税対象とはなりません。)
イ 国又は地方公共団体
ロ 独立行政法人
ハ 国立大学法人及び大学共同利用機関法人
二 一定の地方独立行政法人
ホ 公立大学法人
ヘ 自動車安全運転センター、日本司法支援センター、日本私立学校振興・共済事業団, 日本赤十字社及び福島国際研究教育機構
ト 公益社団法人及び公益財団法人
チ 一定の私立学校法人
リ 社会福祉法人
ヌ 更生保護法人
ル 認定NPO法人
④ 申告書への記載事項等
本特例の適用を受けるためには、相続税の申告書に本特例の適用を受ける旨の記載をした上で、国、地方公共団体又は特定の公益法人が発行した以下の内容が記載された書類を添付しなければなりません(措法70⑤, 措規23の3②) 。
イ 寄附を受けた旨
ロ 寄附年月日
ハ 寄附財産の明細
二 寄附財産の使用目的
(2) 適用除外
上記の通り、本特例は限られた法人等に対して、相続財産の寄附をすることによって、相続税が非課税となります 。ただし、この寄附の結果、その贈与を行った人やその親族等の相続税又は贈与税の負担が不当に減少する結果と認められる場合には、非課税の適用を受けることができません 。
また、寄附先の対象となる法人が、その寄附を受けた日から2年を経過した日までに特例対象法人に該当しないこととなった場合や、寄附を受けた財産を同日までに公益目的の事業の用に供していない場合にも非課税の適用は受けられません(措法70②) 。
そのほか、法人を設立するために行った寄附や認定を受けていないNPO法人への寄附も適用を受けることができないため、注意を要します 。
(3) 所得税との関係
所得税法では、寄附金控除という所得控除が設けられています(所法78) 。これは国や地方公共団体, 特定公益増進法人等に対して、寄附金を支出した場合に、一定の金額について所得控除ができる制度です 。
近年では、「ふるさと納税」という寄附を仄聞しますが、これは所得税の寄附金控除の対象となり、また、住民税における寄附金税額控除の対象となります(地税法37の2①、314の7①) 。地方公共団体は、上記(1)の相続財産の対象寄附先に含まれることから、相続税の計算上、地方公共団体へ寄附をした額は相続税が非課税となり、かつ、寄附者(相続人)は、所得税や住民税の計算上, ふるさと納税を利用した節税が可能になります 。
なお、地方公共団体以外の寄附先でも、寄附金控除の対象となる法人等への寄附であれば、同様の節税が可能です 、相続財産の寄附先の選定をする際には、寄付金控除の対象策も確認しておくとよいでしょう。