遺言の検認
2025年11月19日
Q&A 弁護士のための相続税務70
中央経済社
Q: 父は、自筆証書遺言を残しました。私にすべての遺産を相続させるというものですが、弟は、遺言書を作成した当時、父は認知症であったので、遺言は無効と主張しています。家庭裁判所で検認を受けることができましたので、弟の主張には理由がないと考えてよろしいでしょうか。
A :遺言書の検認は、遺言書の現在の状態を確認して記録に残すものであって、遺言の有効・無効を判断する手続ではありません。
解説
(1) 遺言書の検認
遺言については、公正証書遺言及び自筆証書遺言書保管制度を利用した場合(民法1004②,法務局における遺言書の保管等に関する法律11)を除き、家庭裁判所の検認の請求をしなければなりません(民法1004①)。遺言書が封印されている場合には、その開封も検認手続の中で行われます(同③)。なお、検認の手続を怠った場合には、過料に処する旨規定されています(民法1005)。 遺言書の検認手続は、具体的には、家庭裁判所に申し立てると、相続人に検認期日が連絡され、その期日において、出席した相続人又はその代理人の前で、裁判官が遺言書を開封して確認し、出席者に被相続人の筆跡と一致するか否かの一応の意見を求めて、遺言書の状況とともに記録に残すという方法により行われます。なお、申立人(ないしその代理人)は検認期日に出頭しなければなりませんが、他の相続人は欠席しても構いません。
検認終了後,「検認済証明書」を申請して、証明書付きの遺言書を受け取れば手続は完了です。通常、検認済証明書がないと、金融機関などで名義書換を行うことや不動産についての相続登記を行うことができません。
家庭裁判所に検認を申し立ててから、手続が終了するまでは、通常は1か月程度かかります。ただし、裁判所が混雑する時期には2か月以上かかる場合もあります。
(2) 検認を行う際の注意点
自筆証書遺言を保管、発見した場合には、検認を受ける必要がありますが、検認は遺言書の現在の状況 (形状や加除訂正の状態、日付、署名など)を明確にして、遺言書の偽造・変造を防止するための手続であって、遺言の有効・無効を判断するものではありません。したがって、遺言の有効・無効については、無効確認訴訟等により、その効力について確定することになります。 大審院大正4年1月16日は、「遺言書ノ検認ハ・・・・・・遺言書ノ状態ヲ確証シ後日ニ於ケル偽造若クハ変造ヲ予防シ其保存ヲ確実ナラシムル目的二出ルモノナルヲ以テ検認ノ実質ハ遺言書ノ形式態様等専ラ遺言ノ方式ニ関スル一切ノ事実ヲ調査シテ遺言書其者ノ状態ヲ確定シ其現状ヲ明確ニスルニ在リテ遺言ノ内容ノ真否其効力ノ有無等遺言書ノ実体上ノ効果ヲ判断スルモノニアラス」と判示しています。
(3) 課税上の留意点
遺言としての有効・無効は、家庭裁判所の検認を受けるか否かでは定まりません。また、検認を受けずに遺言を開封したとしても、これにより遺言が無効になるわけではありません。 したがって、遺言書がある場合には、遺言が無効であるとの前提に立つ場合を除き、検認を受けていない場合であっても、遺言書に基づく相続税の申告を行う必要があります。
A :遺言書の検認は、遺言書の現在の状態を確認して記録に残すものであって、遺言の有効・無効を判断する手続ではありません。
解説
(1) 遺言書の検認
遺言については、公正証書遺言及び自筆証書遺言書保管制度を利用した場合(民法1004②,法務局における遺言書の保管等に関する法律11)を除き、家庭裁判所の検認の請求をしなければなりません(民法1004①)。遺言書が封印されている場合には、その開封も検認手続の中で行われます(同③)。なお、検認の手続を怠った場合には、過料に処する旨規定されています(民法1005)。 遺言書の検認手続は、具体的には、家庭裁判所に申し立てると、相続人に検認期日が連絡され、その期日において、出席した相続人又はその代理人の前で、裁判官が遺言書を開封して確認し、出席者に被相続人の筆跡と一致するか否かの一応の意見を求めて、遺言書の状況とともに記録に残すという方法により行われます。なお、申立人(ないしその代理人)は検認期日に出頭しなければなりませんが、他の相続人は欠席しても構いません。
検認終了後,「検認済証明書」を申請して、証明書付きの遺言書を受け取れば手続は完了です。通常、検認済証明書がないと、金融機関などで名義書換を行うことや不動産についての相続登記を行うことができません。
家庭裁判所に検認を申し立ててから、手続が終了するまでは、通常は1か月程度かかります。ただし、裁判所が混雑する時期には2か月以上かかる場合もあります。
(2) 検認を行う際の注意点
自筆証書遺言を保管、発見した場合には、検認を受ける必要がありますが、検認は遺言書の現在の状況 (形状や加除訂正の状態、日付、署名など)を明確にして、遺言書の偽造・変造を防止するための手続であって、遺言の有効・無効を判断するものではありません。したがって、遺言の有効・無効については、無効確認訴訟等により、その効力について確定することになります。 大審院大正4年1月16日は、「遺言書ノ検認ハ・・・・・・遺言書ノ状態ヲ確証シ後日ニ於ケル偽造若クハ変造ヲ予防シ其保存ヲ確実ナラシムル目的二出ルモノナルヲ以テ検認ノ実質ハ遺言書ノ形式態様等専ラ遺言ノ方式ニ関スル一切ノ事実ヲ調査シテ遺言書其者ノ状態ヲ確定シ其現状ヲ明確ニスルニ在リテ遺言ノ内容ノ真否其効力ノ有無等遺言書ノ実体上ノ効果ヲ判断スルモノニアラス」と判示しています。
(3) 課税上の留意点
遺言としての有効・無効は、家庭裁判所の検認を受けるか否かでは定まりません。また、検認を受けずに遺言を開封したとしても、これにより遺言が無効になるわけではありません。 したがって、遺言書がある場合には、遺言が無効であるとの前提に立つ場合を除き、検認を受けていない場合であっても、遺言書に基づく相続税の申告を行う必要があります。