弁護士の知識

不動産の評価

2025年11月19日

Q&A 弁護士のための相続税務70
中央経済社

Q:相続税の申告に当たり、土地や建物の評価方法がよくわかりません。 財産評価基本通達で評価すると、土地の場合は時価の8割、建物の場合は時価の6割と聞きます。
A: 相続税及び贈与税の申告に当たって、宅地の評価額については、路線価方式又は倍率方式で評価し、時価の概ね80%とされています。また、建物の評価額については、固定資産税評価額に基づき算定し、時価の50~70%とされています。
解説・
(1) 財産評価基本通達の定め
相続税法は申告納税制度が採用されていることから、取得財産の価額の時価を納税者が評価し申告を行います。 相続税法22条では、相続、遺贈又は贈与により取得した財産の価額は、当該財産の取得の時における時価によると規定されています。 ただし、一般的に、相続税又は贈与税の課税対象となる土地、家屋等の不動産の時価を的確に把握することは困難といえます。 このため、前記48のとおり、国税庁では、財産評価基本通達第1章総則1(2) (時価の意義)において、「財産の価額は、時価によるものとし、時価とは、課税時期(………………)において、それぞれの財産の現況に応じ、不特定多数の当事者間で自由な取引が行われる場合に通常成立すると認められる価額をいい、その価額は、この通達の定めによって評価した価額による。」(下線は筆者)と定めています。

(2) 土地の評価額の主な算定方法
土地の価格には、相続税法における相続税評価額のほかに、①売買実例価額(土地の売買契約の成立した価額)、②地価公示価格(国土交通省が公表する毎年1月1日時点の主要な土地の価額),③固定資産税評価額(市区町村等の固定資産課税台帳に記載されたその土地の評価額),④鑑定評価額(不動産鑑定士が行う実際の売買を想定した鑑定価額)などがあります。
(3) 相続税法における土地の財産評価
相続税の計算において、宅地の評価方式は、市街地的形態を形成する地域の宅地を路線価方式、それ以外の宅地を倍率方式で評価することとされています(評基通11)。このため、評価しようとする宅地が路線価方式又は倍率方式のいずれで評価をする宅地に該当するか確認します。具体的には、全国の各国税局2で定める財産評価基準書が国税庁ホームページで公開されているので、これらをもとに評価します。
(4) 財産評価基準書の土地の評価水準
土地の固定資産税評価額は地価公示価格の70%が目途となっていますが、相続税法の財産評価基準書は地価公示価格の80%を目途に定められていますので、時価(地価公示価格) の概ね80%の評価となっています。
(5) 家屋の評価方法
家屋の評価方法は、①売買実例をもとに評価する売買評価比較法,再建築価格から経過年数、破損などの減価を控除する再建築費基準法,③賃貸収入から一般経費を控除した残額を一定の金利で還元する収益還元法等がありますが、相続税法における財産評価基準書においては、倍率方式によって評価する旨定められています。
倍率方式とは、固定資産税評価額に一定の倍率を乗じて計算する方式のことをいい、家屋の評価倍率は「1.0」 倍と定められています(評基通89)。
なお、建物の固定資産税評価額は、市区町村から通知される固定資産税の納付書に添付されている課税明細書で確認することができます。
(6) 家屋の評価水準
家屋の固定資産税評価額は各自治体が決定します。土地の固定資産税評価額の水準の目安は、毎年1月1日に定められる地価公示価格の70%ですが、建物の場合は、再建築価額の約70%,工事請負契約の場合は50~70%が目安です。したがって、建物の相続税評価額については、時価の50~70%が目安といわれています。