相続財産から生じた不動産所得②
2025年11月19日
Q&A 弁護士のための相続税務70
中央経済社
Q: 相続財産の中に米国ハワイ州に所在するコンドミニアムがあります。 そのコンドミニアムは、被相続人と妻である私が、ジョイント・テナン シーで所有し、私たちが使用するとき以外は他人に貸しています。その賃 貸収入は被相続人と私の不動産所得として確定申告していました。相続開 始後、私の確定申告は、どのようにすればよいのでしょうか。
A: そのコンドミニアムから生じる賃貸収入は、生存しているジョイント・ テナンシーの所有者であるあなたが、すべての収益を得たものとして、所得税 の確定申告を行わなければなりません。
解説
(1) ハワイ州の制度
ハワイ州の法律によると、ジョイント・テナンシー3 (合有の形態)では、合 有不動産権者のいずれかに相続が開始した場合には、生存合有不動産権者がそ の相続人であるか否かにかかわらず、また、生存合有不動産権者がその相続人 であったとしてもその相続分に関係なく、被相続人の合有不動産権が生存合有 不動産権者(この場合は相談者)に移転することとされています。
合有不動産権とは、共有不動産権と異なり、権利者のうち1人が死亡した場 合には、その権利は相続性を持たず (遺言による変更も不可),その権利は生 存者への権利帰属 (survivorship)の原則に基づいて生存合有不動産権者に帰 属することとされています。
(2) 相続税の課税
この場合、被相続人の合有不動産権が移転したことによる生存合有不動産権 者(相談者)の権利の増加は、対価を支払わないで利益を受けた場合に該当す るため、生存合有不動産権者が移転を受けた被相続人の合有不動産権の価額に 相当する金額について、被相続人から贈与により取得したものとみなされるこ とになります(相法9)。したがって、生存合有不動産権者が被相続人から相 続又は遺贈により財産を取得している場合、被相続人から贈与により取得した ものとみなされた合有不動産権の価額に相当する金額は、相続税の課税価格に 加算され(相法19①), 相続税の課税対象となります。
(3) 所得税の課税
そのコンドミニアムは、被相続人の死亡により、相談者に帰属することとな りますので、そのコンドミニアムから生じる相続開始後の賃貸収入は、相談者 が、すべての収益を得たものとして、所得税(不動産所得)の確定申告を行わ なければなりません。
(4) 外国税額控除(所得稅)
居住者は全世界所得について日本で課税されますが、国外所得について外国 の法令により所得税に相当する税金が課税される場合、二国間において二重課 税の状態になります。この二重課税を調整するために、一定額を所得税額から 控除する制度があり、これを外国税額控除(所得税) といいます(所法95) (前記23参照)。 控除の対象となる税は所得税に相当する税のみであり、例えば日本の消費税 に相当するGoods and Services Taxや、不動産に関連する権益の譲渡に際して 課税されるConveyance taxは資産の値上益に対する所得課税ではないため、 外国税額控除の対象となる所得税には該当しないと考えられています。
A: そのコンドミニアムから生じる賃貸収入は、生存しているジョイント・ テナンシーの所有者であるあなたが、すべての収益を得たものとして、所得税 の確定申告を行わなければなりません。
解説
(1) ハワイ州の制度
ハワイ州の法律によると、ジョイント・テナンシー3 (合有の形態)では、合 有不動産権者のいずれかに相続が開始した場合には、生存合有不動産権者がそ の相続人であるか否かにかかわらず、また、生存合有不動産権者がその相続人 であったとしてもその相続分に関係なく、被相続人の合有不動産権が生存合有 不動産権者(この場合は相談者)に移転することとされています。
合有不動産権とは、共有不動産権と異なり、権利者のうち1人が死亡した場 合には、その権利は相続性を持たず (遺言による変更も不可),その権利は生 存者への権利帰属 (survivorship)の原則に基づいて生存合有不動産権者に帰 属することとされています。
(2) 相続税の課税
この場合、被相続人の合有不動産権が移転したことによる生存合有不動産権 者(相談者)の権利の増加は、対価を支払わないで利益を受けた場合に該当す るため、生存合有不動産権者が移転を受けた被相続人の合有不動産権の価額に 相当する金額について、被相続人から贈与により取得したものとみなされるこ とになります(相法9)。したがって、生存合有不動産権者が被相続人から相 続又は遺贈により財産を取得している場合、被相続人から贈与により取得した ものとみなされた合有不動産権の価額に相当する金額は、相続税の課税価格に 加算され(相法19①), 相続税の課税対象となります。
(3) 所得税の課税
そのコンドミニアムは、被相続人の死亡により、相談者に帰属することとな りますので、そのコンドミニアムから生じる相続開始後の賃貸収入は、相談者 が、すべての収益を得たものとして、所得税(不動産所得)の確定申告を行わ なければなりません。
(4) 外国税額控除(所得稅)
居住者は全世界所得について日本で課税されますが、国外所得について外国 の法令により所得税に相当する税金が課税される場合、二国間において二重課 税の状態になります。この二重課税を調整するために、一定額を所得税額から 控除する制度があり、これを外国税額控除(所得税) といいます(所法95) (前記23参照)。 控除の対象となる税は所得税に相当する税のみであり、例えば日本の消費税 に相当するGoods and Services Taxや、不動産に関連する権益の譲渡に際して 課税されるConveyance taxは資産の値上益に対する所得課税ではないため、 外国税額控除の対象となる所得税には該当しないと考えられています。