プロベート手続での財産換価
2025年11月19日
Q&A 弁護士のための相続税務70
中央経済社
プロベート手続の中での換価
日本の居住者が国外財産を相続する場合において、プロベート(前記 27(1)参照)の中で、その国外財産の換価が行われることがあります。 プロベートが完了するまでは、対象となる財産は遺産財団に帰属し、相 続人への分配は行われません。つまり、プロベートが必要とされる国にお いては、売却の当事者は遺産財団であり、プロベートの過程で、例えばそ の国に所在する不動産や金融機関に預け入れている有価証券を売却したと しても、その換価代金は遺産財団に帰属します。この点、日本にはプロ ベートや遺産財団という概念がなく、プロベートを通して換価された場合 であっても、日本の所得税の課税対象となります。
一般的に国外の不動産や有価証券は、取得時と比べ、値上がりしている ケースが多く、プロベートの過程でその国の財産が売却されたときは、相 続人の所得として多額の所得税が生じる可能性があります。このため、国 際相続が発生し、国外財産を換価した場合には、相続税だけでなく、所得 税の納税資金についても確保する必要があります。
所得税の納税義務
日本の所得税の納税義務者は大きく居住者と非居住者に区分されますが、 そのうち、居住者とは、国内に住所を有し、又は現在まで引き続き1年以 上国内に居所を有する個人をいいます(所法2①三)。居住者である場合 国内外すべての所得 (全世界所得) に対して、所得税の課税対象と なることから、国外の不動産の譲渡についても所得税の課税対象となりま す。
プロベート手続の中での売却のタイミング
所得税の申告と納税の期限は、換価した年の翌年3月15日ですから、例 えば、遺産財団が12月に換価したような場合には、所得税の申告期限まで の期間が短く、申告と納税の準備に十分な時間を確保することが難しくな ります。プロベートの過程で換価される場合には、売却のタイミングを相続人側でコントロールすることが難しいと思われますが、このような場合、 遺産財団に対し、あえて売却を翌年に繰り延べることを働きかけることに よって、所得税の確定申告時期を1年間先延ばしにすることも考慮します。
また、プロベートの過程で換価された国外財産は、相続により取得した 資産の譲渡に該当しますから、相続財産を譲渡した場合の相続税額の取得 費加算の特例(措法39)の適用可否についても、検討する必要があります。
外国税額控除(所得税)
日本では、相続人それぞれが取得する財産の割合に応じて所得税の納税 義務が生じますが、国によっては、遺産管理者等が遺産から生じる所得に 対応する所得税をまとめて申告納税しています。この場合でも、申告する 所得が同一であれば、遺産管理者名義で納めた所得税に対して相続人が外 国税額控除の適用を受けることができるものと思われます。
外国での所得課税については、源泉徴収される場合と申告納税する場合 の2通りがあります。源泉徴収される場合には、資産の売却金額から源泉 徴収して納税されるため、売却した年の譲渡所得の申告時に、外国税額控 除を適用して日本の所得税を計算することができます。一方、外国で申告 納税を行う場合には、売却した年と外国で納税する年とがずれるため、日 本の所得税の申告時期の関係上、外国税額控除を適用する年にずれが生じ ることがあります。 控除できる外国税額には限度額や制限があり、国際間での二重課税を完 全には調整できないケースも生じるため、注意を要します。
日本の居住者が国外財産を相続する場合において、プロベート(前記 27(1)参照)の中で、その国外財産の換価が行われることがあります。 プロベートが完了するまでは、対象となる財産は遺産財団に帰属し、相 続人への分配は行われません。つまり、プロベートが必要とされる国にお いては、売却の当事者は遺産財団であり、プロベートの過程で、例えばそ の国に所在する不動産や金融機関に預け入れている有価証券を売却したと しても、その換価代金は遺産財団に帰属します。この点、日本にはプロ ベートや遺産財団という概念がなく、プロベートを通して換価された場合 であっても、日本の所得税の課税対象となります。
一般的に国外の不動産や有価証券は、取得時と比べ、値上がりしている ケースが多く、プロベートの過程でその国の財産が売却されたときは、相 続人の所得として多額の所得税が生じる可能性があります。このため、国 際相続が発生し、国外財産を換価した場合には、相続税だけでなく、所得 税の納税資金についても確保する必要があります。
所得税の納税義務
日本の所得税の納税義務者は大きく居住者と非居住者に区分されますが、 そのうち、居住者とは、国内に住所を有し、又は現在まで引き続き1年以 上国内に居所を有する個人をいいます(所法2①三)。居住者である場合 国内外すべての所得 (全世界所得) に対して、所得税の課税対象と なることから、国外の不動産の譲渡についても所得税の課税対象となりま す。
プロベート手続の中での売却のタイミング
所得税の申告と納税の期限は、換価した年の翌年3月15日ですから、例 えば、遺産財団が12月に換価したような場合には、所得税の申告期限まで の期間が短く、申告と納税の準備に十分な時間を確保することが難しくな ります。プロベートの過程で換価される場合には、売却のタイミングを相続人側でコントロールすることが難しいと思われますが、このような場合、 遺産財団に対し、あえて売却を翌年に繰り延べることを働きかけることに よって、所得税の確定申告時期を1年間先延ばしにすることも考慮します。
また、プロベートの過程で換価された国外財産は、相続により取得した 資産の譲渡に該当しますから、相続財産を譲渡した場合の相続税額の取得 費加算の特例(措法39)の適用可否についても、検討する必要があります。
外国税額控除(所得税)
日本では、相続人それぞれが取得する財産の割合に応じて所得税の納税 義務が生じますが、国によっては、遺産管理者等が遺産から生じる所得に 対応する所得税をまとめて申告納税しています。この場合でも、申告する 所得が同一であれば、遺産管理者名義で納めた所得税に対して相続人が外 国税額控除の適用を受けることができるものと思われます。
外国での所得課税については、源泉徴収される場合と申告納税する場合 の2通りがあります。源泉徴収される場合には、資産の売却金額から源泉 徴収して納税されるため、売却した年の譲渡所得の申告時に、外国税額控 除を適用して日本の所得税を計算することができます。一方、外国で申告 納税を行う場合には、売却した年と外国で納税する年とがずれるため、日 本の所得税の申告時期の関係上、外国税額控除を適用する年にずれが生じ ることがあります。 控除できる外国税額には限度額や制限があり、国際間での二重課税を完 全には調整できないケースも生じるため、注意を要します。