暦年贈与加算の改正
2025年11月19日
Q&A 弁護士のための相続税務70
中央経済社
Q: 母は高齢となり、私への贈与を考えているようです。最近の税制改 正では、相続税の計算に足し戻される生前贈与について改正が行われたと 聞きました。
A: あなたが、お母様から相続,遺贈によって財産を取得した場合, からその相続開始前7年以内に暦年課税贈与によって取得した財産があるとき は、あなたの相続税の課税価格に贈与を受けた財産の贈与時の価額が加算され ます(以下「生前贈与加算」といいます。前記12(1)参照)。
解説
生前贈与加算は、生前の分割贈与による相続税負担の軽減を図ることを防止 するための措置として設けられています。 令和5年度税制改正では、資産移転(贈与による移転・相続による移転)の 時期の選択により中立的な税制を構築する観点から、次の改正が行われました。
(1) 加算対象期間の見直し
被相続人からその相続開始前7年以内(令和5年度税制改正前は3年以内) に受けた暦年課税贈与が、加算対象となります(相法19①)。なお、この加算 期間の延長には経過措置が設けられており、実際の加算期間は次のようになります(令5改正法附則19②③)。
相続開始日 加算対象となる贈与
令和6年1月1日~令和8年12月31日 相続開始前3年以内の贈与
令和9年1月1日~令和12年12月31日 令和6年1月1日~相続開始日までの贈与
令和13年1月1日以後 相続開始前7年以内の贈与
(2) 加算される財産の価額の見直し
相続開始前7年以内(令和5年度改正前は3年以内)に被相続人から受けた 贈与については、総額100万円までの金額は相続税の課税価格に加算されない 措置が設けられました (相法19①)。
(3) 暦年課税贈与に当たっての留意事項
暦年課税贈与の生前贈与加算の対象となる人は、被相続人から相続又は遺贈 によって財産を取得した人です。したがって、被相続人の子の配偶者や代襲相 続人ではない孫など、被相続人から遺贈を受けていない人は、生前贈与加算の 対象となりません。ただし、これらの人が遺贈やみなし相続財産・みなし遺贈 財産とされる生命保険金等や死亡退職金(前記8(2)(3)参照)などを取得してい る場合には、生前贈与加算の対象者となるため注意が必要です。 相続税の節税対策に当たっては、生前贈与加算の対象とならない人への贈与 の検討のほか、相続時精算課税制度(後記61参照)も踏まえ、制度の選択を考 慮します。
(4) 本事例における生前贈与
令和5年度税制改正を受け、生前贈与のプランニングは以下の要素をもとに 判断するとよいでしょう。母から子への贈与については、これらの要素を総合 的に判断しつつ贈与のプランニングを行うとよいと考えられます。
・関係者の範囲及び各関係人の意向
・贈与の目的
・誰に贈与をするのか(推定相続人
・受遺者,推定相続人
・受遺者以外のいずれ に贈与をするのか)
・被相続人の有する財産の内容及びその額
・相続開始が見込まれる時期までの年数
・軽減される税額 (贈与税額と相続税額のトータルの税額)
・自社株式など継続して価値上昇が見込まれる財産の有無
A: あなたが、お母様から相続,遺贈によって財産を取得した場合, からその相続開始前7年以内に暦年課税贈与によって取得した財産があるとき は、あなたの相続税の課税価格に贈与を受けた財産の贈与時の価額が加算され ます(以下「生前贈与加算」といいます。前記12(1)参照)。
解説
生前贈与加算は、生前の分割贈与による相続税負担の軽減を図ることを防止 するための措置として設けられています。 令和5年度税制改正では、資産移転(贈与による移転・相続による移転)の 時期の選択により中立的な税制を構築する観点から、次の改正が行われました。
(1) 加算対象期間の見直し
被相続人からその相続開始前7年以内(令和5年度税制改正前は3年以内) に受けた暦年課税贈与が、加算対象となります(相法19①)。なお、この加算 期間の延長には経過措置が設けられており、実際の加算期間は次のようになります(令5改正法附則19②③)。
相続開始日 加算対象となる贈与
令和6年1月1日~令和8年12月31日 相続開始前3年以内の贈与
令和9年1月1日~令和12年12月31日 令和6年1月1日~相続開始日までの贈与
令和13年1月1日以後 相続開始前7年以内の贈与
(2) 加算される財産の価額の見直し
相続開始前7年以内(令和5年度改正前は3年以内)に被相続人から受けた 贈与については、総額100万円までの金額は相続税の課税価格に加算されない 措置が設けられました (相法19①)。
(3) 暦年課税贈与に当たっての留意事項
暦年課税贈与の生前贈与加算の対象となる人は、被相続人から相続又は遺贈 によって財産を取得した人です。したがって、被相続人の子の配偶者や代襲相 続人ではない孫など、被相続人から遺贈を受けていない人は、生前贈与加算の 対象となりません。ただし、これらの人が遺贈やみなし相続財産・みなし遺贈 財産とされる生命保険金等や死亡退職金(前記8(2)(3)参照)などを取得してい る場合には、生前贈与加算の対象者となるため注意が必要です。 相続税の節税対策に当たっては、生前贈与加算の対象とならない人への贈与 の検討のほか、相続時精算課税制度(後記61参照)も踏まえ、制度の選択を考 慮します。
(4) 本事例における生前贈与
令和5年度税制改正を受け、生前贈与のプランニングは以下の要素をもとに 判断するとよいでしょう。母から子への贈与については、これらの要素を総合 的に判断しつつ贈与のプランニングを行うとよいと考えられます。
・関係者の範囲及び各関係人の意向
・贈与の目的
・誰に贈与をするのか(推定相続人
・受遺者,推定相続人
・受遺者以外のいずれ に贈与をするのか)
・被相続人の有する財産の内容及びその額
・相続開始が見込まれる時期までの年数
・軽減される税額 (贈与税額と相続税額のトータルの税額)
・自社株式など継続して価値上昇が見込まれる財産の有無