取締役の報酬|報酬が減額!?
2025年11月19日
書名: 税理士業務で知っておきたい法律知識
著者名: 森 章太, 出版社名: 日本実業出版社, 発行年月日: 2022年4月1日, 引用ページ: 不明, ISBNコード: 978-4-534-05917-8
取締役の報酬は、税理士試験によく出題されています。
令和2(2020)年度法人税法の計算問題では、「役員給与に関する事項」として「定時株主総会において決議された各職務執行期間の給与の月額」の資料が与えられています。専務取締役Bについては、「令和2年11月の就業時間の現場指揮対応の不十分さから、令和2年11月分から令和3年3月分までの5ヶ月間の給与について60万円の予定を、50万円に減額して支給したものであり、当該決定は取締役Cに該当しない」とされています。また、取締役Cについては、「令和2年12月分から令和3年3月分までの4ヶ月間の給与について、55万円の予定を60万円に増額して支給した。この増額支給の改定事由は臨時改定事由には該当しない」とされています。
また、平成24(2012)年度相続税法の計算問題では、被相続人の役員給与は、月額100万円であったが、病気のため入院し、長期間の療養が必要と見込まれたため、取締役会で月額50万円に引き下げることが決定したという記述がありました。
本節では、取締役の報酬(会社法)について解説します。
1 取締役の報酬等に関する規則
(1) 利益供与
取締役の報酬、賞与その他の職務執行の対価として会社から受ける財産上の利益(以下「報酬等」)は、(指名委員会等設置会社を除き)定款または株主総会決議(普通決議)によって定めます(会社361条1項、404条3項)。お手盛りを防ぐため、取締役会が自由に定めることはできません。
なお、法人税法においては、役員に対して支給する職務の対価を「役員給与」といいます。
2 株主総会決議で定めるべき事項
取締役の報酬等のうち額が確定しているものについては、定款または株主総会決議によってその額を定めます(会社361条1項)。
実務上は、取締役の個人別の報酬額が明らかになることを避けるため、株主総会では、取締役全員の報酬総額の最高限度額のみを定め、各人の報酬額は、取締役会に一任することが多いです。報酬総額の限度額を定めれば、その後、(限度額に変更がなければ)改めて株主総会決議を行う必要もないと考えられています。
取締役の個人別の報酬額の決定を一任された取締役会は、さらにその決定を代表取締役に一任することができます。
3 報酬額の事後的な変更
株主総会決議などにより、取締役の職務執行の対価の報酬額を定めた場合には、取締役と会社との間の委任契約の内容となるため、期間とか職務内容に著しい変更があっても、取締役の同意なく、報酬を減額することはできません。
一方、報酬を増額することは、株主総会によって定められた報酬総額の限度内であれば可能です。
冒頭の設例で紹介した試験問題では、報酬を減額された取締役の同意の有無について触れられていませんが、本人の同意が必要です。
譲渡制限として、「法人税法、役員給与は、臨時改定事由または業績悪化改定事由によりなされた改定でなければなりません(法人税法34条1項1号、税法69条の81項)。臨時改定事由とは、法人役員の職制上の地位の変更、職務内容の重大な変更その他これらに類するやむを得ない事情です。冒頭の設例で紹介した減額措置の、病気のための入院し、長期療養が必要と見込まれることは、臨時改定事由に該当します。
また、業績悪化改定事由とは、経営の状況が著しく悪化したこと、その他これに類する事情です。やむを得ず役員給与を減額せざるを得ない事情のことであり、法人との一時的な資金繰りの都合や単に業績目標値に達しなかったことなどは業績悪化改定事由に含まれません(法人基本通達9-2-13)。
4 取締役の退職慰労金
(1) 株主総会決議の必要性
取締役の退職慰労金は、在職中の職務執行の対価であるため、報酬等の一部として、定款または株主総会決議で定める必要があります。
ただし、退職慰労金の支給について、株主総会決議を若逃していたくても、支給額が、株主総会決議で定められた取締役の報酬総額の限度額内であれば、適法に支給することができるとされています。
(2) 株主総会決議で定めるべき事項
実務では、取締役の退職慰労金支給の決議が用いられるのを嫌って、株主総会では、一定の支給基準に従って支給するものとし、具体的な支給額などは取締役会の決議に一任する旨の決議がなされることが多いです。一任された取締役会は、代表取締役にさらに一任することもできます。
判例は、内規や慣行によって支給基準が確立しており、株主が支給基準を知ろうと思えば知ることができる場合には、取締役の退職慰労金の具体的な支給額などを取締役会の定めに一任する旨の株主総会決議を適法としています。
(3) 役員退職慰労金規程
株主に対して支給基準を示すことや、課税庁から支給額が不相当に高額であると指摘された場合に算定根拠を示すことができるようにすることなどを目的として、役員退職慰労金の算定規程が作成されることがあります。
会社に役員退職慰労金規程があっても、株主総会決議がなければ、取締役には、退職慰労金を請求する権利は発生しません。
COLUMN 1 使用人兼務役員の報酬・給与
(1) 税理士試験
税理士試験の法人税法には、使用人兼務役員がよく出題されます。
平成30(2018)年度の計算問題では、「X社は、株主総会の決議により、取締役の報酬総額を年額4,000万円以内とすることを定めているが、これには使用人兼務役員の使用人分の報酬を含めないこととしている。また、各人の金額の詳細は、取締役会の決議において決定することとされている」と記述されています。
また、平成27(2015)年度の理論問題では、「法人税法における使用人兼務役員の意義を簡潔に述べなさい」という問題がありました。
(2) 使用人兼務役員とは?
法人税法上、使用人兼務役員とは、役員(社長、理事長、代表取締役、副社長・専務・常務その他これらに準ずる職制上の地位を有する役員などを除く)のうち、部長、課長その他法人の使用人としての職制上の地位を有し、かつ、常時使用人としての職務に従事するものをいいます(法税34条1項・6項、法税令71条1項)。
(3) 使用人兼務役員の職務執行の対価
使用人兼務役員については、取締役としての報酬は細かく、職務執行の対価の大部分が使用人給与であることが多いです。
使用人として受ける給与の体系が明確に確立している場合には、株主総会においては取締役の職務執行の対価のみを決議しても適法にはなりません。実務では、報酬には使用人給与分が含まれないことを明記したうえで、株主総会において取締役の報酬等の決議が行われています。
なお、名目的役員であるにすぎず、使用人の地位を有するので、使用人に適用される退職金規程に基づいて、会社に対して退職金を請求するという事件において、使用人性(従業員性)が争われることがあります。
COLUMN 2 所得税の源泉徴収制度の合憲性
所得税の源泉徴収を当然の制度として捉えている方が多いかと思いますが、制度が憲法29条1項・3項(財産権)、14条1項(法の下の平等)に違反するとして争われた事件があります。
他の納税義務者のために過度に重く過度な義務を課されることは憲法29条1項・3項に違反しないか、給与所得者が事業所得者に比して源泉徴収によって徴税上格別の取扱いを受けており、源泉徴収義務者が一般国民に比して不平等な取扱いを受けたりしており、憲法14条1項に違反しないかが問題となりました。
最高裁昭和37(1962)年2月28日判決・裁判所Webは、憲法29条、24条は「租税の徴収、納税の時期、方法等を定める法律によることとしたと解したわけでなく、税徴収の方法をも法律によることと要するものとした趣旨と解すべきである。
税徴収の方法としては、担税義務者に直接納入させるのが原則であるが、国によっては第三者をして徴収し納入させる途を選択するものもあり、実情においてその例は少くない。給与所得者に対する所得税の源泉徴-収制度は、これによって国は税収を確保し、徴税手続を簡便化してその費用と労力とを節約し得るのみならず、納税者の側においても申告、納付等に関する煩雑な事務から免れることができる。また担税義務者としても、給与の支払をうけ所得税を分割してその翌月10日までにこれを国に納付すればよいのであるから、利するところ全くないとはいえない。されば源泉徴収制度は、給与所得者に対する所得税の徴収方法として合理的であり、合憲的であって、公共の福祉の要請にこたえるものといわなければならない。」、「かように担税義務者の徴税義務は憲法の条規に由来し、公共の福祉によって要請されるものであるから、この制度は前論のように憲法29条1項に反するものではなく、また、この制度のために、担税義務者において、所論のような負担を負うものであるとしても、右負担は同条3項にいう公共のために私有財産を用いる場合には該当せず、同条項の適用を要するものでもない」と判示しました。
そして、「租税はすべて最も合理的な理由なき方法によって徴収せらるべきものであるから、同じ所得税であっても、所得の種類や事情の異なるに応じてそれぞれにふさわしいような徴税の方法、納付の時期等の別異に定められることはむしろ当然であって、それが等一でないことをもって憲法14条に違反するということでできない。」また、「法は、給与の支払をなす者が給与を受けとる者と特に密接な関係にあって、徴収上相当の便宜を有し、能率を挙げ得る点を考慮して、これを徴税義務者としているのである。この義務が、憲法の条規に由来し、公共の福祉の要請にそうものである」、「かような合理的理由がある以上これに基いて創設者と特別の関係を有する徴税義務者に一般的納税者と異なる特別の義務を負担させたからとて、これをもって憲法14条に違反するものということとはできない」と判示しました。
上記判例に対して、①徴税義務の履行に必要な経済的負担は、源泉徴収義務者の経営規模や収入状態と比べれば些少で、国庫の今日的な財政上の要請である、②源泉徴収の対象とされていない所得については、源泉徴収に対応するものとして予定納税制度(所税104条)があり、給与所得者は事業所得者に比して徴税上格別の取扱いを受けているわけではないという見解があります。
POINT 2
取締役の報酬等(退職慰労金含む)は、定款または株主総会決議(普通決議)によって定める。
実務上は、株主総会では、取締役全員の報酬総額の上限を定め、各人の報酬額は、取締役会に一任することが多い。
株主総会決議などにより、取締役の職務執行の対価の報酬額を定めた場合には、在職中に容易に内容の著しい変更があっても、取締役の同意なく、報酬を減額することは原則できない。
取締役の退職慰労金については、支給基準などを取締役会で決定に一任する旨の株主総会決議は、内規や慣行によって支給基準が確立しており、株主が支給基準を知ろうと思えば知ることができる場合には、適法である。
令和2(2020)年度法人税法の計算問題では、「役員給与に関する事項」として「定時株主総会において決議された各職務執行期間の給与の月額」の資料が与えられています。専務取締役Bについては、「令和2年11月の就業時間の現場指揮対応の不十分さから、令和2年11月分から令和3年3月分までの5ヶ月間の給与について60万円の予定を、50万円に減額して支給したものであり、当該決定は取締役Cに該当しない」とされています。また、取締役Cについては、「令和2年12月分から令和3年3月分までの4ヶ月間の給与について、55万円の予定を60万円に増額して支給した。この増額支給の改定事由は臨時改定事由には該当しない」とされています。
また、平成24(2012)年度相続税法の計算問題では、被相続人の役員給与は、月額100万円であったが、病気のため入院し、長期間の療養が必要と見込まれたため、取締役会で月額50万円に引き下げることが決定したという記述がありました。
本節では、取締役の報酬(会社法)について解説します。
1 取締役の報酬等に関する規則
(1) 利益供与
取締役の報酬、賞与その他の職務執行の対価として会社から受ける財産上の利益(以下「報酬等」)は、(指名委員会等設置会社を除き)定款または株主総会決議(普通決議)によって定めます(会社361条1項、404条3項)。お手盛りを防ぐため、取締役会が自由に定めることはできません。
なお、法人税法においては、役員に対して支給する職務の対価を「役員給与」といいます。
2 株主総会決議で定めるべき事項
取締役の報酬等のうち額が確定しているものについては、定款または株主総会決議によってその額を定めます(会社361条1項)。
実務上は、取締役の個人別の報酬額が明らかになることを避けるため、株主総会では、取締役全員の報酬総額の最高限度額のみを定め、各人の報酬額は、取締役会に一任することが多いです。報酬総額の限度額を定めれば、その後、(限度額に変更がなければ)改めて株主総会決議を行う必要もないと考えられています。
取締役の個人別の報酬額の決定を一任された取締役会は、さらにその決定を代表取締役に一任することができます。
3 報酬額の事後的な変更
株主総会決議などにより、取締役の職務執行の対価の報酬額を定めた場合には、取締役と会社との間の委任契約の内容となるため、期間とか職務内容に著しい変更があっても、取締役の同意なく、報酬を減額することはできません。
一方、報酬を増額することは、株主総会によって定められた報酬総額の限度内であれば可能です。
冒頭の設例で紹介した試験問題では、報酬を減額された取締役の同意の有無について触れられていませんが、本人の同意が必要です。
譲渡制限として、「法人税法、役員給与は、臨時改定事由または業績悪化改定事由によりなされた改定でなければなりません(法人税法34条1項1号、税法69条の81項)。臨時改定事由とは、法人役員の職制上の地位の変更、職務内容の重大な変更その他これらに類するやむを得ない事情です。冒頭の設例で紹介した減額措置の、病気のための入院し、長期療養が必要と見込まれることは、臨時改定事由に該当します。
また、業績悪化改定事由とは、経営の状況が著しく悪化したこと、その他これに類する事情です。やむを得ず役員給与を減額せざるを得ない事情のことであり、法人との一時的な資金繰りの都合や単に業績目標値に達しなかったことなどは業績悪化改定事由に含まれません(法人基本通達9-2-13)。
4 取締役の退職慰労金
(1) 株主総会決議の必要性
取締役の退職慰労金は、在職中の職務執行の対価であるため、報酬等の一部として、定款または株主総会決議で定める必要があります。
ただし、退職慰労金の支給について、株主総会決議を若逃していたくても、支給額が、株主総会決議で定められた取締役の報酬総額の限度額内であれば、適法に支給することができるとされています。
(2) 株主総会決議で定めるべき事項
実務では、取締役の退職慰労金支給の決議が用いられるのを嫌って、株主総会では、一定の支給基準に従って支給するものとし、具体的な支給額などは取締役会の決議に一任する旨の決議がなされることが多いです。一任された取締役会は、代表取締役にさらに一任することもできます。
判例は、内規や慣行によって支給基準が確立しており、株主が支給基準を知ろうと思えば知ることができる場合には、取締役の退職慰労金の具体的な支給額などを取締役会の定めに一任する旨の株主総会決議を適法としています。
(3) 役員退職慰労金規程
株主に対して支給基準を示すことや、課税庁から支給額が不相当に高額であると指摘された場合に算定根拠を示すことができるようにすることなどを目的として、役員退職慰労金の算定規程が作成されることがあります。
会社に役員退職慰労金規程があっても、株主総会決議がなければ、取締役には、退職慰労金を請求する権利は発生しません。
COLUMN 1 使用人兼務役員の報酬・給与
(1) 税理士試験
税理士試験の法人税法には、使用人兼務役員がよく出題されます。
平成30(2018)年度の計算問題では、「X社は、株主総会の決議により、取締役の報酬総額を年額4,000万円以内とすることを定めているが、これには使用人兼務役員の使用人分の報酬を含めないこととしている。また、各人の金額の詳細は、取締役会の決議において決定することとされている」と記述されています。
また、平成27(2015)年度の理論問題では、「法人税法における使用人兼務役員の意義を簡潔に述べなさい」という問題がありました。
(2) 使用人兼務役員とは?
法人税法上、使用人兼務役員とは、役員(社長、理事長、代表取締役、副社長・専務・常務その他これらに準ずる職制上の地位を有する役員などを除く)のうち、部長、課長その他法人の使用人としての職制上の地位を有し、かつ、常時使用人としての職務に従事するものをいいます(法税34条1項・6項、法税令71条1項)。
(3) 使用人兼務役員の職務執行の対価
使用人兼務役員については、取締役としての報酬は細かく、職務執行の対価の大部分が使用人給与であることが多いです。
使用人として受ける給与の体系が明確に確立している場合には、株主総会においては取締役の職務執行の対価のみを決議しても適法にはなりません。実務では、報酬には使用人給与分が含まれないことを明記したうえで、株主総会において取締役の報酬等の決議が行われています。
なお、名目的役員であるにすぎず、使用人の地位を有するので、使用人に適用される退職金規程に基づいて、会社に対して退職金を請求するという事件において、使用人性(従業員性)が争われることがあります。
COLUMN 2 所得税の源泉徴収制度の合憲性
所得税の源泉徴収を当然の制度として捉えている方が多いかと思いますが、制度が憲法29条1項・3項(財産権)、14条1項(法の下の平等)に違反するとして争われた事件があります。
他の納税義務者のために過度に重く過度な義務を課されることは憲法29条1項・3項に違反しないか、給与所得者が事業所得者に比して源泉徴収によって徴税上格別の取扱いを受けており、源泉徴収義務者が一般国民に比して不平等な取扱いを受けたりしており、憲法14条1項に違反しないかが問題となりました。
最高裁昭和37(1962)年2月28日判決・裁判所Webは、憲法29条、24条は「租税の徴収、納税の時期、方法等を定める法律によることとしたと解したわけでなく、税徴収の方法をも法律によることと要するものとした趣旨と解すべきである。
税徴収の方法としては、担税義務者に直接納入させるのが原則であるが、国によっては第三者をして徴収し納入させる途を選択するものもあり、実情においてその例は少くない。給与所得者に対する所得税の源泉徴-収制度は、これによって国は税収を確保し、徴税手続を簡便化してその費用と労力とを節約し得るのみならず、納税者の側においても申告、納付等に関する煩雑な事務から免れることができる。また担税義務者としても、給与の支払をうけ所得税を分割してその翌月10日までにこれを国に納付すればよいのであるから、利するところ全くないとはいえない。されば源泉徴収制度は、給与所得者に対する所得税の徴収方法として合理的であり、合憲的であって、公共の福祉の要請にこたえるものといわなければならない。」、「かように担税義務者の徴税義務は憲法の条規に由来し、公共の福祉によって要請されるものであるから、この制度は前論のように憲法29条1項に反するものではなく、また、この制度のために、担税義務者において、所論のような負担を負うものであるとしても、右負担は同条3項にいう公共のために私有財産を用いる場合には該当せず、同条項の適用を要するものでもない」と判示しました。
そして、「租税はすべて最も合理的な理由なき方法によって徴収せらるべきものであるから、同じ所得税であっても、所得の種類や事情の異なるに応じてそれぞれにふさわしいような徴税の方法、納付の時期等の別異に定められることはむしろ当然であって、それが等一でないことをもって憲法14条に違反するということでできない。」また、「法は、給与の支払をなす者が給与を受けとる者と特に密接な関係にあって、徴収上相当の便宜を有し、能率を挙げ得る点を考慮して、これを徴税義務者としているのである。この義務が、憲法の条規に由来し、公共の福祉の要請にそうものである」、「かような合理的理由がある以上これに基いて創設者と特別の関係を有する徴税義務者に一般的納税者と異なる特別の義務を負担させたからとて、これをもって憲法14条に違反するものということとはできない」と判示しました。
上記判例に対して、①徴税義務の履行に必要な経済的負担は、源泉徴収義務者の経営規模や収入状態と比べれば些少で、国庫の今日的な財政上の要請である、②源泉徴収の対象とされていない所得については、源泉徴収に対応するものとして予定納税制度(所税104条)があり、給与所得者は事業所得者に比して徴税上格別の取扱いを受けているわけではないという見解があります。
POINT 2
取締役の報酬等(退職慰労金含む)は、定款または株主総会決議(普通決議)によって定める。
実務上は、株主総会では、取締役全員の報酬総額の上限を定め、各人の報酬額は、取締役会に一任することが多い。
株主総会決議などにより、取締役の職務執行の対価の報酬額を定めた場合には、在職中に容易に内容の著しい変更があっても、取締役の同意なく、報酬を減額することは原則できない。
取締役の退職慰労金については、支給基準などを取締役会で決定に一任する旨の株主総会決議は、内規や慣行によって支給基準が確立しており、株主が支給基準を知ろうと思えば知ることができる場合には、適法である。