連帯債務|債務者の絆!?
2025年11月19日
書名: 税理士業務で知っておきたい法律知識
著者名: 森 章太, 出版社名: 日本実業出版社, 発行年月日: 2022年4月1日, 引用ページ: 不明, ISBNコード: 978-4-534-05917-8
実務において、連帯債務や保証債務の知識は重要です。連帯債務者(連帯保証人)になったために、自己破産(2-8P154頁)せざるを得なくなる方もいます。
本節では、連帯債務(民法)について解説します。
1 物約担保と人的担保
債務を担保できるようにするために担保をとることがあります。担保には、物的担保と人的担保があります。
物的担保とは、物の財産的価値によって債務を担保することをいいます。具体的には、担保物権(例、抵当権(1-3P30頁)、譲渡担保(2-4P42頁))などです。物的担保の長所として、担保物の価値が低下しない限り、担保物権を行使して債権を回収できるのが長所です。他方、短所として、優先弁済を受けるための手続(競売など)に時間と費用がかかります。
これに対して、人的担保とは、人の信用力によって債務を担保することをいいます。具体的には、「連帯債務」(本節)、「連帯保証債務」(3-7P198頁)です。長所として、資力のある協力者がいる場合には、債権者が破産する可能性が低くなります。他方、短所として、人の信用力に依存するため担保としての効力が不安定です。
2 分割債務
債務の目的が性質上可分である場合において、債務者が複数いるときは、各債務者は、それぞれ独立した債務を負担し、原則として等しい割合で債務を負担します(民427条、分割債務)。この場合は、債務者の人数が増えるほど回収可能性が高まるわけではありません。
例えば、貸金債権(1,000万円)について、債務者が2人いる場合には、各債務者は500万円ずつ支払義務を負います。債務者の1人が支払いをしなくても、もう1人の債務者に500万円を超えて支払義務を負うことはありません。
なお、各債務者が当事者として等しい割合で債務を負うというのは、債権者との間での関係であり、債務者相互の内部関係(負担割合)も別個に定めることができます。自分の負担額以上の弁済をした債務者は、他の債務者に対して求償請求(償いを求める権利を行使)できます。
○分割債務
債権者(1000万円)→債務者A(500万円)+債務者B(500万円)
実務上は、債務者が複数いる場合、債務者が分割主義を避けるため、契約などにより連帯債務とすることが多いです。
3 連帯債務
(1) 連帯債務とは?
連帯債務の場合、各債務者は、それぞれ独立した債務を負担し、対外的には全部の弁済すべき義務を負い(民436条)、1人が弁済すればすべての債務が消滅されます。債務者の人数が増えるほど回収可能性が高まります。
例えば、貸金債権(1,000万円)に対して、連帯債務者が2人いる場合には、各債務者は1,000万円の支払義務を負います。債務者が分割を主張することはできません。1,000万円の支払いがあり、債務者の1人が1,000万円を弁済すれば、もう1人の債務者の債務もすべて消滅します。
連帯債務は、特定の意思表示(例、共同不法行為についての民法19条)または当事者の意思表示(例、契約)によって成立します。
○連帯債務
債権者(1000万円)→債務者A(1000万円)+債務者B(1000万円)
民法436条(連帯債務者に対する履行の請求)
債務の目的がその性質上可分である場合において、法令の規定又は当事者の意思表示によって数人が連帯して債務を負担するときは、債権者は、その連帯債務者の一人に対し、又は同時に若しくは順次に全ての連帯債務者に対し、全部又は一部の履行を請求することができる。
(2) 連帯債務者の求償権
ア 求償権の範囲
連帯債務者の1人が弁済をすると自己の財産をもって免責を得た(連帯債務者を消滅または減少させた)ときは、その連帯債務者は、他の連帯債務者に対し、支出した財産額(財産額が免責を得た額を超える場合には、免責額)のうち各自の負担部分に応じた額を求償請求することができます(民442条1項)。
例えば、貸金債権(1,000万円)に対して、連帯債務者が2人いる場合(負担割合は同じ)において、債務者の1人が債権者に対して200万円を弁済したときは、弁済した債務者は、もう1人の債務者に対して、200万円の支払いを請求することができます。
なお、免責を得る前及び後に、他の連帯債務者に通知しないと、求償権が制限されることがあります(民443条)。
イ 求償権の範囲
連帯債務者が弁済のために支出した財産の額だけでなく、免責日以後の法定利息(当分は年3%)及び避けることのできなかった費用(例、弁済費用、訴訟費用)なども含まれます(民442条2項)。
ウ 連帯債務者の負担部分
負担部分とは、連帯債務者相互の内部関係において、各自が債務を負担すべき割合をいいます。負担部分の割合はあらかじめあるからか、各連帯債務者の利益の割合によって定まり、契約がなければ、連帯債務者を通じた国税債権の割合によって、各自がうけた利益の割合によって決定されます。決まらない場合には、平等の割合と解されます。
エ 連帯債務者の中に無資力者がいる場合
連帯債務者の中に償還をする資力のない者があるときは、その償還することができない部分は、他の連帯債務者が各自の負担部分に応じて分担して負担します(民444条1項)。免責を得た連帯債務者の求償の確保を目的としています。
(3) 連帯債務の課税関係
相続税の債務控除の対象となる債務は、確実と認められるものに限られます(相基法14条1項)。
連帯債務を相続し、債務控除を受けようとする者の負担部分が明らかになっている場合には、その負担部分に相当する額が債務控除の対象になります。
また、連帯債務者のうちに弁済不能の状態にある者があり、かつ、求償して弁済を受ける見込みがない場合には、弁済不能者の負担部分を負担しなければならないと認められる金額の全額を、債務控除の対象になります(相基通14-2)。
COLUMN 14 租税法律主義
[1] 租税法律主義
憲法84条は「あらたに租税を課し、又は現行の租税を変更するには、法律又は法律の定める条件によることを必要とする」とし、租税法律主義を定めています。国民の財産権を保障するため、法律の定めによることのより、納税は、恣意的な課税から守られ、予測可能性・法的安定性が与えられます。
・租税法律主義によって、国民は恣意的な課税から保護され、予測可能性・法的安定性が与えられます。
[2] 通達課税
(1) 通達とは?
税法の解釈の権限は、財務省にかかわらず、行政の内部基準にとどまる通達(内部法)である行政規則です。上級行政機関が下級行政機関に対して命令する権限の範囲内である行政規則による行政内部での拘束力を有しますが、国民に対して直接拘束力をもつものではありません。
税務行政においては、複雑・難解な租税法令の統一性を確保するため、膨大な解釈通達が出されており、強い影響力があります。もっとも、法律に反する通達課税、通達で納税義務を創設することは租税法律主義に違反しており(通達の許容性)、許されない。
(2) 非課税
非課税の範囲が長期にわたった後、課税を継続してパチンコ遊技機に対して物品税(消費税の導入に伴い廃止)を課税した処分につき、行政実例違反に反し、無効であるかが争われた事件があります。
最高裁昭和33(1958)年3月28日判決・裁判所Webは、「課税庁が所論のように長年にわたって課税しなかったものであっても、過去の行為が法の正しい解釈に合致するものである以上、本件課税処分は法の規定に基づき適法に処分する」と判示しました。
この判例に対しては、長年にわたり課税であったという事実に対して信頼が生じている場合にはその信頼を保護すべきであるべきである、非課税としてきた業務を変更するのであれば新たな法律によるべきであるという批判があります。
(3) 合法性の原則とは?
「租税行政では、法律で定められている租税の徴収の義務があり、減免の自由・徴収しない自由はないということを「合法性の原則」といいます。租税法律主義の静的な側面にあります。
画一的な処理を採ることで、納税者間の公平が維持され、また、租税行政による不正が生ずるおそれが減ります。
(2) 税務訴訟における租税法律主義
令和2(2020)年度の国税の還付または徴収に係る訴訟事件のうち、国税被告事件の終結件数は169件ですが、そのうち和解によって終結したのは0件です。また、国税原告事件の終結件数は104件ですが、そのうち和解によって終結した事件は1件です(司法統計事件編令和2(2020)年)。国税庁長官通達「国税庁所管税務訴訟事件における和解について(事務運営指針)」は、
なお、上記の和解による民事事件の解決には、①(債権者の減免)債務者
の任務を期待する制度で、強制執行対象財産の捜索の手段や強制執行の準備をすること、②(債権者の)権利の満足と債務者の生活保障の調和をはかることを、③当事者の時間的経済的負担を減らすことを図ることをというメリットがあり、地方裁判所の民事調停手続の利用事件の申立件数が3〜4割は和解によって終結しています。
また、税務調査などの段階において、「当事者の便宜や衡平な結論等のために、たとえ収入金額などの重要な事項の金額について解釈に異論する余地が見られないため、これは、法律に反する通達でなく、納税義務者の同意による和解の形をとりながら解決につながったというのではなく、行政指導に対する納税者の承諾の範疇にすぎず、課税処分に対する納税者の承諾が反映したものと解すべき」(金子宏「租税法」97頁)と考えられています。
(4) 適法立法禁止
法律によって不利益な遡及効を定めることは認められないということを「遡及立法禁止」といいます。
法律は、国税徴収法48条及び30条によって、刑事上の責任の遡及処罰を禁止しています。これに対して、法律による遡及効は直接条文で禁止する規定はなく、法律による遡及効は明示的に許される場合があります。
個人の場合5年を超えて土地建物等に譲渡したことによる譲渡所得の金額の計算上控除できる50万円の控除制度があったことについて、譲渡所得の金額が多額にのぼり、かつ、高率の累進税率が適用になり、多額の納税義務が課されることではないかが争われた事件があります。
最高裁平成23(2011)年9月22日判決・裁判所Webは、「(1)(略)改正法が施行された平成16年4月1日の時点において既に所有期間の取得日の経過をいまだ満たしていない納税者について、所有する土地等の譲渡所得について、所有期間の取得日の経過を前提として、将来施行される法律に適用され、所得税の納税義務が変動することになる。しかしながら、長期譲渡は既存の法律の納税義務の内容を前提としてされるものであり、また、所有者が1番目に長期に譲渡する際の所得金額について課税されるものであること、(略)、個々の納税関係における法律の規定の適用が変更され、客観的に影響があるものといえるのである。る。(2)法律は、譲渡所得及び相続の関連性の認識の有無が法律で明確に定められてきたことを前提とするものであるが、この点について法律による明確な定めがないことをもって「権利の剥奪」と解するのが相当である。(略)、そして、法律で一定日から法律の遡及の必要性を法案で定めることによって法的に安定を阻害するおそれのある場合には、法律による遡及適用について、その内容及び遡及を許容する程度の公益上の要請を総合的に考慮して、その効果が法律によって許容される合理的な理由として認められるものであるかどうかによって判断すべきものであるところ(略)、法律の遡及適用の変更及びその変更の法律上の遡及適用についての法律による規定が法の遡及適用について、その目的及び法の遡及適用の影響の内容及び法の遡及適用の場合においても、これに付随すべきものである。
したがって、「略)、法律が遡及適用が憲法の規定に反するか否かについては、「略」納税者の租税法上の地位に対する合理的な期待として許容されるべきものであるかどうかという観点から判断するのが相当である。
(3)(略)まず、(略)、上記規定は、長期譲渡所得の金額の計算において所得が生じた場合に各控除がある一方で、異なる控除がある場合にはその適用がされることによる不利益を解決し、適正な租税の負担の要請に応じ得るようにするために、高率の累進税率による所得税の引下げをあわせて、他の控除制度が設けられた経緯によるものである。次に、上記規定は、長期譲得所得の金額が多額にのぼり、高率の累進税率が適用になる場合に、不動産の投機的な取引(買戻しの遡及)の進行を阻止することを主な目的として定められたものであり、これも、(略)平成10年の時点で長期譲渡から除外することとされたのは、その適用期間の経過に伴い、取得者が、取得後5年を超える長期譲渡益を目的として土地建物等を譲渡した場合、取得者が、取得後5年を超える長期譲渡益を目的として土地建物等を譲渡した際に、多額の納税義務が課されるおそれがあったため、これを防止する目的によるものであったと解されるところ、平成16年分以降の所得税に係る譲渡所得の計算上適用されるべきものであったと平成16年分の所得税に係る租税法律主義に反すると認められた不動産、不動産、不動産中の不動産の売却の利益が
行われたとしても考慮すると、上記のそれぞれの具体的なものであったというべきである。そうすると、「略」本件改正法が本件申告期限までに条改正法の規定を当初から適用することとしたことは、具体的な公益上の要請に基づくものであったということができる。
そして、このような要請に基づく法改正により事後的に変更されるのは、上記(1)によると、納税者の納税義務それ自体ではなく、特定の資産に係る損失繰越控除終了後に残余資産をして納税者の負担を軽減を図ることで納税者の所得に帰し得る地位にあるものである。そして、納税者に、他の租税に比べ、上記所得が生じた結果の実現に寄与するものであるならば、当該譲渡の翌年の申告終了後に所得が生じたものによるものであるので、当該譲渡が長年にわたるものであるのであればその地位は不確定な性格を帯びるものといわざるを得ない。また、租税法規は、財政・経済・社会政策等の国政全般の見地から総合的な政策判断及び極めて専門技術的な判断を踏まえてたえず改正され得るものであり、納税者の上記地位もこのような政策的、技術的な判断を踏まえてたえず政策的に法改正が図られた性格を有するものであること、本件法改正が長期譲渡所得を対象とする法定率が改正された時期には、長期譲渡所得の計算において損失が生じた場合にのみ損金通算を認めることは不合理であり、これを解消することが適正な租税負担の要請に応えることになるとされるなど、上記地位について政策的な見地から合目的的判断がされるに至っていたものといえる。」、「暦年の初日から改正法の施行日の前日までの間にその適用対象となるようにより年数や月数などを通じて公平が図られる面があり、また、その期間も暦年のうち3か月に限られている。納税者においては、これによって納税負担の軽減に係る期待がある程度減少したとしても、将来にわたる所得に帰し得ることはできるのであるから、それ以上に一律に成立した納税義務を加重されるなどの不利益を避けるものではない」。したがって、本件改正法は、「納税者の租税法規上の地位に対する合理的な期待を不当に侵害するものではない」と判示しました。
遡及課税の必要性、納税者の権利・地位の期待、及び遡及課るによる不利益の程度が重要な考慮要素となっています。
POINT 1
債務の目的が性質上可分である場合において、債務者が複数いるときは、各債務者は、それぞれ独立した債務を負担し、原則として等しい割合で債務を負担すべき。
連帯債務の場合、各債務者は、それぞれ独立した債務を負担し、対外的には全部の弁済すべき義務を負い、1人が弁済すればすべての債務者が免れる。
連帯債務者の1人が弁済をするなど自己の財産をもって免責を得たときは、その連帯債務者は、他の連帯債務者に対し、支出した財産の額のうち各自の負担部分に応じた額を求償請求することができる。
本節では、連帯債務(民法)について解説します。
1 物約担保と人的担保
債務を担保できるようにするために担保をとることがあります。担保には、物的担保と人的担保があります。
物的担保とは、物の財産的価値によって債務を担保することをいいます。具体的には、担保物権(例、抵当権(1-3P30頁)、譲渡担保(2-4P42頁))などです。物的担保の長所として、担保物の価値が低下しない限り、担保物権を行使して債権を回収できるのが長所です。他方、短所として、優先弁済を受けるための手続(競売など)に時間と費用がかかります。
これに対して、人的担保とは、人の信用力によって債務を担保することをいいます。具体的には、「連帯債務」(本節)、「連帯保証債務」(3-7P198頁)です。長所として、資力のある協力者がいる場合には、債権者が破産する可能性が低くなります。他方、短所として、人の信用力に依存するため担保としての効力が不安定です。
2 分割債務
債務の目的が性質上可分である場合において、債務者が複数いるときは、各債務者は、それぞれ独立した債務を負担し、原則として等しい割合で債務を負担します(民427条、分割債務)。この場合は、債務者の人数が増えるほど回収可能性が高まるわけではありません。
例えば、貸金債権(1,000万円)について、債務者が2人いる場合には、各債務者は500万円ずつ支払義務を負います。債務者の1人が支払いをしなくても、もう1人の債務者に500万円を超えて支払義務を負うことはありません。
なお、各債務者が当事者として等しい割合で債務を負うというのは、債権者との間での関係であり、債務者相互の内部関係(負担割合)も別個に定めることができます。自分の負担額以上の弁済をした債務者は、他の債務者に対して求償請求(償いを求める権利を行使)できます。
○分割債務
債権者(1000万円)→債務者A(500万円)+債務者B(500万円)
実務上は、債務者が複数いる場合、債務者が分割主義を避けるため、契約などにより連帯債務とすることが多いです。
3 連帯債務
(1) 連帯債務とは?
連帯債務の場合、各債務者は、それぞれ独立した債務を負担し、対外的には全部の弁済すべき義務を負い(民436条)、1人が弁済すればすべての債務が消滅されます。債務者の人数が増えるほど回収可能性が高まります。
例えば、貸金債権(1,000万円)に対して、連帯債務者が2人いる場合には、各債務者は1,000万円の支払義務を負います。債務者が分割を主張することはできません。1,000万円の支払いがあり、債務者の1人が1,000万円を弁済すれば、もう1人の債務者の債務もすべて消滅します。
連帯債務は、特定の意思表示(例、共同不法行為についての民法19条)または当事者の意思表示(例、契約)によって成立します。
○連帯債務
債権者(1000万円)→債務者A(1000万円)+債務者B(1000万円)
民法436条(連帯債務者に対する履行の請求)
債務の目的がその性質上可分である場合において、法令の規定又は当事者の意思表示によって数人が連帯して債務を負担するときは、債権者は、その連帯債務者の一人に対し、又は同時に若しくは順次に全ての連帯債務者に対し、全部又は一部の履行を請求することができる。
(2) 連帯債務者の求償権
ア 求償権の範囲
連帯債務者の1人が弁済をすると自己の財産をもって免責を得た(連帯債務者を消滅または減少させた)ときは、その連帯債務者は、他の連帯債務者に対し、支出した財産額(財産額が免責を得た額を超える場合には、免責額)のうち各自の負担部分に応じた額を求償請求することができます(民442条1項)。
例えば、貸金債権(1,000万円)に対して、連帯債務者が2人いる場合(負担割合は同じ)において、債務者の1人が債権者に対して200万円を弁済したときは、弁済した債務者は、もう1人の債務者に対して、200万円の支払いを請求することができます。
なお、免責を得る前及び後に、他の連帯債務者に通知しないと、求償権が制限されることがあります(民443条)。
イ 求償権の範囲
連帯債務者が弁済のために支出した財産の額だけでなく、免責日以後の法定利息(当分は年3%)及び避けることのできなかった費用(例、弁済費用、訴訟費用)なども含まれます(民442条2項)。
ウ 連帯債務者の負担部分
負担部分とは、連帯債務者相互の内部関係において、各自が債務を負担すべき割合をいいます。負担部分の割合はあらかじめあるからか、各連帯債務者の利益の割合によって定まり、契約がなければ、連帯債務者を通じた国税債権の割合によって、各自がうけた利益の割合によって決定されます。決まらない場合には、平等の割合と解されます。
エ 連帯債務者の中に無資力者がいる場合
連帯債務者の中に償還をする資力のない者があるときは、その償還することができない部分は、他の連帯債務者が各自の負担部分に応じて分担して負担します(民444条1項)。免責を得た連帯債務者の求償の確保を目的としています。
(3) 連帯債務の課税関係
相続税の債務控除の対象となる債務は、確実と認められるものに限られます(相基法14条1項)。
連帯債務を相続し、債務控除を受けようとする者の負担部分が明らかになっている場合には、その負担部分に相当する額が債務控除の対象になります。
また、連帯債務者のうちに弁済不能の状態にある者があり、かつ、求償して弁済を受ける見込みがない場合には、弁済不能者の負担部分を負担しなければならないと認められる金額の全額を、債務控除の対象になります(相基通14-2)。
COLUMN 14 租税法律主義
[1] 租税法律主義
憲法84条は「あらたに租税を課し、又は現行の租税を変更するには、法律又は法律の定める条件によることを必要とする」とし、租税法律主義を定めています。国民の財産権を保障するため、法律の定めによることのより、納税は、恣意的な課税から守られ、予測可能性・法的安定性が与えられます。
・租税法律主義によって、国民は恣意的な課税から保護され、予測可能性・法的安定性が与えられます。
[2] 通達課税
(1) 通達とは?
税法の解釈の権限は、財務省にかかわらず、行政の内部基準にとどまる通達(内部法)である行政規則です。上級行政機関が下級行政機関に対して命令する権限の範囲内である行政規則による行政内部での拘束力を有しますが、国民に対して直接拘束力をもつものではありません。
税務行政においては、複雑・難解な租税法令の統一性を確保するため、膨大な解釈通達が出されており、強い影響力があります。もっとも、法律に反する通達課税、通達で納税義務を創設することは租税法律主義に違反しており(通達の許容性)、許されない。
(2) 非課税
非課税の範囲が長期にわたった後、課税を継続してパチンコ遊技機に対して物品税(消費税の導入に伴い廃止)を課税した処分につき、行政実例違反に反し、無効であるかが争われた事件があります。
最高裁昭和33(1958)年3月28日判決・裁判所Webは、「課税庁が所論のように長年にわたって課税しなかったものであっても、過去の行為が法の正しい解釈に合致するものである以上、本件課税処分は法の規定に基づき適法に処分する」と判示しました。
この判例に対しては、長年にわたり課税であったという事実に対して信頼が生じている場合にはその信頼を保護すべきであるべきである、非課税としてきた業務を変更するのであれば新たな法律によるべきであるという批判があります。
(3) 合法性の原則とは?
「租税行政では、法律で定められている租税の徴収の義務があり、減免の自由・徴収しない自由はないということを「合法性の原則」といいます。租税法律主義の静的な側面にあります。
画一的な処理を採ることで、納税者間の公平が維持され、また、租税行政による不正が生ずるおそれが減ります。
(2) 税務訴訟における租税法律主義
令和2(2020)年度の国税の還付または徴収に係る訴訟事件のうち、国税被告事件の終結件数は169件ですが、そのうち和解によって終結したのは0件です。また、国税原告事件の終結件数は104件ですが、そのうち和解によって終結した事件は1件です(司法統計事件編令和2(2020)年)。国税庁長官通達「国税庁所管税務訴訟事件における和解について(事務運営指針)」は、
なお、上記の和解による民事事件の解決には、①(債権者の減免)債務者
の任務を期待する制度で、強制執行対象財産の捜索の手段や強制執行の準備をすること、②(債権者の)権利の満足と債務者の生活保障の調和をはかることを、③当事者の時間的経済的負担を減らすことを図ることをというメリットがあり、地方裁判所の民事調停手続の利用事件の申立件数が3〜4割は和解によって終結しています。
また、税務調査などの段階において、「当事者の便宜や衡平な結論等のために、たとえ収入金額などの重要な事項の金額について解釈に異論する余地が見られないため、これは、法律に反する通達でなく、納税義務者の同意による和解の形をとりながら解決につながったというのではなく、行政指導に対する納税者の承諾の範疇にすぎず、課税処分に対する納税者の承諾が反映したものと解すべき」(金子宏「租税法」97頁)と考えられています。
(4) 適法立法禁止
法律によって不利益な遡及効を定めることは認められないということを「遡及立法禁止」といいます。
法律は、国税徴収法48条及び30条によって、刑事上の責任の遡及処罰を禁止しています。これに対して、法律による遡及効は直接条文で禁止する規定はなく、法律による遡及効は明示的に許される場合があります。
個人の場合5年を超えて土地建物等に譲渡したことによる譲渡所得の金額の計算上控除できる50万円の控除制度があったことについて、譲渡所得の金額が多額にのぼり、かつ、高率の累進税率が適用になり、多額の納税義務が課されることではないかが争われた事件があります。
最高裁平成23(2011)年9月22日判決・裁判所Webは、「(1)(略)改正法が施行された平成16年4月1日の時点において既に所有期間の取得日の経過をいまだ満たしていない納税者について、所有する土地等の譲渡所得について、所有期間の取得日の経過を前提として、将来施行される法律に適用され、所得税の納税義務が変動することになる。しかしながら、長期譲渡は既存の法律の納税義務の内容を前提としてされるものであり、また、所有者が1番目に長期に譲渡する際の所得金額について課税されるものであること、(略)、個々の納税関係における法律の規定の適用が変更され、客観的に影響があるものといえるのである。る。(2)法律は、譲渡所得及び相続の関連性の認識の有無が法律で明確に定められてきたことを前提とするものであるが、この点について法律による明確な定めがないことをもって「権利の剥奪」と解するのが相当である。(略)、そして、法律で一定日から法律の遡及の必要性を法案で定めることによって法的に安定を阻害するおそれのある場合には、法律による遡及適用について、その内容及び遡及を許容する程度の公益上の要請を総合的に考慮して、その効果が法律によって許容される合理的な理由として認められるものであるかどうかによって判断すべきものであるところ(略)、法律の遡及適用の変更及びその変更の法律上の遡及適用についての法律による規定が法の遡及適用について、その目的及び法の遡及適用の影響の内容及び法の遡及適用の場合においても、これに付随すべきものである。
したがって、「略)、法律が遡及適用が憲法の規定に反するか否かについては、「略」納税者の租税法上の地位に対する合理的な期待として許容されるべきものであるかどうかという観点から判断するのが相当である。
(3)(略)まず、(略)、上記規定は、長期譲渡所得の金額の計算において所得が生じた場合に各控除がある一方で、異なる控除がある場合にはその適用がされることによる不利益を解決し、適正な租税の負担の要請に応じ得るようにするために、高率の累進税率による所得税の引下げをあわせて、他の控除制度が設けられた経緯によるものである。次に、上記規定は、長期譲得所得の金額が多額にのぼり、高率の累進税率が適用になる場合に、不動産の投機的な取引(買戻しの遡及)の進行を阻止することを主な目的として定められたものであり、これも、(略)平成10年の時点で長期譲渡から除外することとされたのは、その適用期間の経過に伴い、取得者が、取得後5年を超える長期譲渡益を目的として土地建物等を譲渡した場合、取得者が、取得後5年を超える長期譲渡益を目的として土地建物等を譲渡した際に、多額の納税義務が課されるおそれがあったため、これを防止する目的によるものであったと解されるところ、平成16年分以降の所得税に係る譲渡所得の計算上適用されるべきものであったと平成16年分の所得税に係る租税法律主義に反すると認められた不動産、不動産、不動産中の不動産の売却の利益が
行われたとしても考慮すると、上記のそれぞれの具体的なものであったというべきである。そうすると、「略」本件改正法が本件申告期限までに条改正法の規定を当初から適用することとしたことは、具体的な公益上の要請に基づくものであったということができる。
そして、このような要請に基づく法改正により事後的に変更されるのは、上記(1)によると、納税者の納税義務それ自体ではなく、特定の資産に係る損失繰越控除終了後に残余資産をして納税者の負担を軽減を図ることで納税者の所得に帰し得る地位にあるものである。そして、納税者に、他の租税に比べ、上記所得が生じた結果の実現に寄与するものであるならば、当該譲渡の翌年の申告終了後に所得が生じたものによるものであるので、当該譲渡が長年にわたるものであるのであればその地位は不確定な性格を帯びるものといわざるを得ない。また、租税法規は、財政・経済・社会政策等の国政全般の見地から総合的な政策判断及び極めて専門技術的な判断を踏まえてたえず改正され得るものであり、納税者の上記地位もこのような政策的、技術的な判断を踏まえてたえず政策的に法改正が図られた性格を有するものであること、本件法改正が長期譲渡所得を対象とする法定率が改正された時期には、長期譲渡所得の計算において損失が生じた場合にのみ損金通算を認めることは不合理であり、これを解消することが適正な租税負担の要請に応えることになるとされるなど、上記地位について政策的な見地から合目的的判断がされるに至っていたものといえる。」、「暦年の初日から改正法の施行日の前日までの間にその適用対象となるようにより年数や月数などを通じて公平が図られる面があり、また、その期間も暦年のうち3か月に限られている。納税者においては、これによって納税負担の軽減に係る期待がある程度減少したとしても、将来にわたる所得に帰し得ることはできるのであるから、それ以上に一律に成立した納税義務を加重されるなどの不利益を避けるものではない」。したがって、本件改正法は、「納税者の租税法規上の地位に対する合理的な期待を不当に侵害するものではない」と判示しました。
遡及課税の必要性、納税者の権利・地位の期待、及び遡及課るによる不利益の程度が重要な考慮要素となっています。
POINT 1
債務の目的が性質上可分である場合において、債務者が複数いるときは、各債務者は、それぞれ独立した債務を負担し、原則として等しい割合で債務を負担すべき。
連帯債務の場合、各債務者は、それぞれ独立した債務を負担し、対外的には全部の弁済すべき義務を負い、1人が弁済すればすべての債務者が免れる。
連帯債務者の1人が弁済をするなど自己の財産をもって免責を得たときは、その連帯債務者は、他の連帯債務者に対し、支出した財産の額のうち各自の負担部分に応じた額を求償請求することができる。