税理士の知識

養子|今日から私の子

2025年11月19日

書名: 税理士業務で知っておきたい法律知識
著者名: 森 章太, 出版社名: 日本実業出版社, 発行年月日: 2022年4月1日, 引用ページ: 不明, ISBNコード: 978-4-534-05917-8

相続税や贈与税の対策として、養子縁組が利用されることがあります。養子縁組は、税理士試験の相続税法において、ほぼ毎年のように出題されています。令和3(2021)年度の計算問題では、AはBの養子であることになっています。また、平成23(2011)年度の理論問題では、養子縁組後に離婚したことになっています。
本節では、養子(民法)について解説します。

1 養子制度とは?
養子制度は、(自然の血縁関係のない者の間に、人為的に嫡出親子関係を創設する制度です。普通養子と特別養子があります。

2 普通養子
(1)養子縁組の成立
普通養子縁組は、養親となる者と養子となる者との間の契約です。戸籍届を提出し受理されることによって、養子縁組が成立します(民法799条が準用する739条1項)。
令和元(2019)年度の養子縁組の届出件数は7万2732件です(e-Stat)。

(2)養親・養子の要件
養親となる者には、20歳以上であればよく(民法792条)、養子となる者は、年齢に制限はありません。
養親や配偶者も養子にすることはできません(民法793条)。養子縁組は親子関係を形成する制度であるからです。

(3)配偶者のある者の縁組
配偶者のある者が未成年者を養子とするときは、原則として夫婦共同で縁組をしなければなりません(民法795条)。夫婦が共に養親となることが子の養育のためには望ましいからです。
また、配偶者のある者が養親となる縁組をするには、配偶者の同意を得なければなりません(民法796条)。縁組関係、相続関係、扶養関係などに影響を及ぼすからです。

(4)未成年養子
成年者が養子となる場合は、当事者の合意によって縁組ができます。未成年者が養子となる場合は、特別の制限が設けられています。
15歳未満の者を養子とするには、法定代理人(例、親権者)が代わって縁組の承諾をします(民法797条1項)。15歳未満の者は、自ら縁組をする能力がないとされています。これに対して、15歳以上の者は、未成年者であっても、意思能力を有していれば、法定代理人の同意なしに養子縁組をすることができます。
未成年者を養子とするには、原則として、家庭裁判所の許可を得なければなりません(民法798条)。裁判所が養子縁組が適切であるかどうかを客観的に判断することによって未成年者の保護を図っています。

(5)養子縁組の意思
縁組を行うには、当事者間に縁組をする意思があることが要件となります(民法802条1号参照)。
相続税の節税のために養子縁組をする場合の縁組意思の有無が問題となった事件において、最高裁平成29(2017)年1月31日判決・裁判所Webは、「相続税の節税の動機と縁組をする意思とは、併存し得るものである。したがって、専ら相続税の節税のために養子縁組をする場合であっても、直ちに当該養子縁組について民法802条1号にいう「当事者間に縁組をする意思がない」場合に当たるとすることはできない」と判示しました。
もっとも、相続税の節税のためだけの養子縁組を無効としないとしても、税法上、相続人の数に算入される養子の数の制限(不動産4の節税3(2))によって、節税効果が得られない可能性があります。

(6)普通養子縁組の効果
養子縁組の効果は、養親の嫡出子の身分を取得します(民法809条)。実親との親子関係も存続したままなので、二重の親子関係が成立します。
また、養子と養親との間には、縁組の日から親族関係が生じます(民法727条)。なお、養親と養子の親族との間には、親族関係は生じません(民法727条)。養子縁組によって、親族関係を生ずる親族の範囲を広くしすぎないためです。
離縁は、当事者の協議によって行うことができます(民法811条1項)。
普通養子縁組と成立します(民法812条が準用する739条1項)。協議離婚と同様に、養親と養子の両方が離縁届に署名押印して、届出をする(民法812条が準用する765条1項)。
縁組によって、養子縁組により生じた親族関係は終了します(民法729条)。

3 特別養子
(1)特別養子縁組とは?
特別養子縁組とは、縁組の日から実方の血族との親子関係を終了させる縁組です(民法817条の2第1項)。
養親は、原則として、婚姻中の夫婦でなければなりません(民法817条の3第1項)。実親の養育が困難または不適当であることが必要です。実親の養育を終了させる制度であるからです。
父母による子の虐待が社会問題となる中で、子の利益のために特に必要があると認めるときであっても、特別養子縁組の申立てができることになっています(民法817条の7)。また、養子となる者の父母の同意も、原則として要件となっています(民法817条の6)。

(2)家庭裁判所の審判
特別養子縁組は、縁組となる者の申立てに基づき家庭裁判所の審判により成立します(民法817条の2)。当事者の合意によって成立するものではありません。令和2(2020)年度の特別養子縁組の成立件数は693件です(民法817条)。

(3)養親・養子の要件
特別養子縁組の場合、縁組となる者には、配偶者のある者であることが要件となり、夫婦として共同縁組でなければなりません(民法817条の3)。養子は、原則として15歳未満でなければなりません(民法817条の4)。一般的に養子関係に最も関係が深いといわれる幼いときに特別養子縁組を可能にしています。
特別養子縁組の効果は、原則として15歳未満でなければなりません(民法817条の5)。